インテリアコーディネーターの最前線:前編
小島真子(MAKO) 株式会社Laugh style代表

by twistdesign

インテリアコーディネーターとしテレビや雑誌など多数のメディアにも出演されている小島真子(MAKO)さん。株式会社Laugh style代表としてモデルハウスやサロン、オフィス、ホテル、個人宅のインテリアコーディネート・スタイリングをベースに、近年では法人企業とコラボレーションして商品や店舗のプロデュースを行われています。今回はMAKOさんに、インテリアコーディネーターとしてのキャリアやそのやりがい、自宅のインテリアをアップデートするコツなどについてお話を伺いました。

―はじめに、インテリアコーディネーターとはどのようなお仕事なのか教えてください。

ひとことでインテリアコーディネーターといっても、いろいろなタイプの仕事があります。家具屋さんなどで家具を販売されている方もいれば、展示場やハウスメーカーなどで内装材を決めるコーディネーター、家をつくる過程で内装などのお手伝いをする方、セミナーや専門学校での講義を中心にインテリアコーディネートを教えている方もいます。その中でも、わたしは何かに特化しているというよりも、全てをやっているという感じですね。新築のお宅なら壁紙や床材の内装材を決めるお仕事もありますし、リフォームのご相談に乗ることもあります。店舗や住宅のインテリアコーディネートをしたり、一緒に家具屋さんに行って家具の選定をお手伝いしたり、セミナーなどで教えるお仕事をすることもあります。インテリアコーディネーターは、「空間」という観点で生活を豊かにするお手伝いをする仕事だと思っています。

お客様は多岐にわたっていて、一般のご家族や、店舗・サロン・飲食店のオーナーやクリニックの先生などが多いですね。セミナーやイベントであれば広告代理店や企業の方からの依頼も多いです。家具メーカーからのご依頼もありますし、商業施設で住まいに関するイベントをやる際にゲストでお話をすることもあります。

―たとえば新築の家のコーディネートの場合、どのような仕事の流れになりますか。

新築の場合、間取りはハウスメーカーや設計士さんの時点で決まっていることが多いです。間取りがきまると次の段階として室内の内装材を決定していくことになりますが、主に床・壁紙・天井などの大きな面積の他、床の幅木や天井の廻り縁、ドア本体やドアの取手など、多くの細かな部分も決めていくことになります。
そのような内装材の選定部分の際に、コーディネートのご依頼を頂くことが多いです。
建築スケジュールにのっとって、お客様とコーディネーターが一緒に相談しながら決めていくのですが、上棟時にはほぼ内装材の決定をしておくようなスケジュールになります。
壁床などの内装は既に決まっていて、家具だけのプランをご依頼いただくこともあります。その場合はご依頼から2週間くらいでご提案することが多いですね。

―家具のコーディネートをするときは?

お問い合わせがあった時点で、お客様の予算とお部屋のイメージやお好きなテイストをうかがいしてお見積りをお出しします。そこでマッチすれば、実際にお会いするときにご希望のテイストをベースに詳しくヒアリングしていきます。お子様の有無やペットがいるかどうか、日中は留守にしていて夜過ごすことが多いかどうか、仕事をしているのか、生活リズムなど、その人のライフスタイルによりレイアウトや選ぶ家具を決めていきます。住む人の生活を理解していないと満足いただけるコーディネートにならないので、ヒアリングは重要ですね。私らしいコーディネートというのはもちろんあるのですが、ニーズをきいてお客様に合せた提案をしていくことも重視しています。

―インテリアコーディネーターにはどんな人が向いているのでしょうか。

マメで体力ある人が向いていると思います。おしゃれな仕事のイメージがあるかもしれませんが、実は結構ハードな仕事です。例えば家具が納品された時に位置が悪ければ自分で重量のある家具を持って動かす必要がありますし、車両誘導や掃除など泥臭い仕事もします。意外と気づかないポイントとしては、周囲のお宅やお店への気遣いですね。納品や作業の際に周囲のお宅にご迷惑にならないように気遣いをしたりする必要もある。個人のお客様なら今後のご近所付き合いもありますし、法人なら売上や評判にもかかわってくることなので、室内だけではなく周囲への影響にも気配りできることは必要かと思います。

インテリアコーディネーターに向いている人としては、いろいろな要素があると思いますが、お部屋や装飾、ファブリックやアート、家具が好きな人は多いですね。もともと家具屋さんから、フリーでインテリアコーディネーターになる人もいらっしゃいますね。家具屋さんによるが、自社だけでなく他社メーカーの商品に詳しいような場合、独立される人も多いのではないでしょうか。また、情報収集のために展示会やレセプションなどにこまめに出かけたりする必要もあります。
お客様とイメージを共有する力も重要ですね。コーディネートをつくる際には、まずお客様にヒアリングします。いただいたイメージや言葉をもとに、家具や事例の写真を使いながら具体的なイメージ共有をしたり、3Dイメージでプランをお見せします。人によってはイメージをビジュアルでお見せしても、色やテイストについてご本人の好き嫌いをなかなかうまく言語化できないお客様もいます。空間認識も人によって差があるので、実際に作り込んだ結果、お客様のイメージしていたものと異なったり、認識の齟齬が発生することがあります。イメージ共有のための表現力や、お客様のご要望を理解する力も必要だと思います。

―インテリアコーディネーターのやりがい、面白さとはどんなところにありますか?

私はもともと部屋が好きなのですが、家具や照明などに特定のものに対してものすごいマニアックなわけではないんです。ただ、インテリアのBefore Afterが大好きなんです。メイクもファッションも、Before Afterはおもしろい。前後の変化を感じられるのが、自分にとっては面白さを感じるポイントだと思います。
あと、自分にとって衣食住でいう「住」というのは一生関係していきたいことだと思っています。仕事として考えたとき、衣食住の3つの項目の中でも住というのはトレンドに左右されにくいと思います。もちろん家具や素材などで細かいトレンドはあるのですが、ニーズに対しての基本のやり方は変わらない。住なら、自分のセンスやトレンドに対するアンテナが多少落ちても、基本の部分はキープして長く仕事としてやっていけると思っています。
人って、動かなくなると感覚が鈍ってしまいますよね。だから常に行動しながら、いろいろなものを見る機会をとりいれていきたい。年齢による衰えはどうしてもあるから、それとリズムを合せて仕事をしていきたいですし、自分が働きやすくやりがいを感じられる環境を「住」にかかわる仕事でつくっていきたいと思っています。

―MAKOさんがインテリアコーディネーターになろうと思ったきっかけを教えてください。

雑誌の「私の部屋」を見ることが好きでした。
インテリアコーディネーターの資格は当時22歳からの受験資格となっていたので、短大をやめて働き始めました。
最初は高校生のとき趣味で通っていたスポーツクラブで働いていましたが、やはり不動産・住まい系がいいなと思い不動産会社で働きはじめました。働いていた不動産会社は競売物件の取り扱いが多かったのですが、そこで壁のクロスを選ぶお仕事がありました。いま見れば質感や厚みなど違いがはっきり分かるのですが、当時はクロスを見本表から選ぶときにも、同じような白い壁紙ばかりでどんな違いがあるか分かりませんでした。不動産会社での内装の仕事をきっかけにインテリアの勉強への熱が再燃しました。
また、賃貸の仲介をしているときに「この部屋、もう少し収納が多かったら契約したのに!」と言われたことがありました。不動産屋の立場では間取りは変更できないですが、インテリア的に収納を改善する提案ができるのではないかと思い、インテリアコーディネートへの意識が強まりました。

その後、宅建やFPなど住居関係の資格をとって、コーディネーターの資格も資格取得学校でとりました。資格は学校で取得したので、当初はインテリアコーディネーターの仕事があまり具体的には把握できていなかったのですが、必要そうな分野は自分で調べたり、レッスンやセミナーを受けて勉強しました。

―これまでのお仕事で、どんなものが印象に残っていますか。

インテリアコーディネーターを依頼するお客様って、お部屋のおしゃれさへのこだわりが強い人が多いようなイメージがあると思うのですが、おしゃれでセンスの良いお部屋を求める人もいれば、こちらが提案するより「もうちょっとダサくてもいい」という人も実はいるんです。私の提案はとてもおしゃれで気に入っているが「自分には合わないのでもう少しダサくして欲しい」というお客様もいます。そのようなお客様と接することを通して、素敵な暮らし・憧れの部屋を実現したいという人もいれば、より現実的なものを求める人もいるということが分かってきたのが印象的でした。
一般の住宅でなく、例えばモデルハウスでも、万人が「おしゃれ!」と思うようなコーディネートよりも、10人に1人が気にいるような部屋にして欲しいというオーダーがあります。たとえば「50代以上の夫婦で、おしゃれへのこだわりよりも居心地を重視する」というようにターゲットが明確な場合、現実感のあるようなコーディネートの方が売りやすいというようなことがあるようです。
インテリアコーディネーターとして、私なりのスタイルでおしゃれな空間をご提案をすることも大事なのですが、最終的にはそこに長く住み続けていくお客様の居心地の良さが大事です。そういう意味で、自分の理想や自己満足を押し付けないように気をつけていますし、完璧すぎない・余白のあるコーディネートということを意識しています。

―最近は企業とのコラボレーションの仕事も増えていらっしゃるようですね。企業さんとのお仕事で印象的なものはありますか。

AtoZという会社のキャンピングカーの内装のお仕事が印象的でした。埼玉のキャンピングカー会社さんなのですが、キャンピングカーの内装を変えることでお客さんにアピールしたいということでご相談いただきました。ネーミングや使用シーン、ストーリーの設定から、実際の内装のコーディネートまでプロデュースしました。50代以上をターゲットにした落ち着いたテイストのシリーズや、30代をターゲットにした明るい印象のシリーズをコーディネートして、同社のキャンピングカー製品としてパッケージ化しました。いま、キャンピングカーはアウトドアの流行や防災の観点からも人気がありますよね。インテリアコーディネーターとしてのお仕事は、いろいろなところに広がりがあると思いますが、その中でも面白いお仕事でした。

―個人宅でのインテリアを改善するとき、どこから手を付けるとよいでしょう。

改善できるポイントは沢山あると思います。
ただ、インテリアコーディネートを考える以前に、そもそも部屋の大きさに対して物が多すぎるお宅というのがよくあります。不要なものが部屋の隅に積み重なって高さが出ていたりすると、それだけで乱雑な印象になってしまいますよね。まずは不要なもの、使っていないものを処分することから始めるといいかもしれません。
家具の配置というポイントでいうと、家具の高さや奥行きの凸凹は高さや奥行きがデコボコしていると、お部屋が整って見えにくいです。奥行きの異なる家具を並べて使っているなら、壁にぴったりつけるのではなく手前の位置をそろえるだけで部屋が整って広く見えるようになります。
また、遠近感を利用するのも1つのポイントです。人の目というのは遠近法で遠くのものを小さく感じ手前のものを大きく感じますよね。それを利用して、部屋の入口側など手前に高さのある家具を置いて、部屋の奥に行くにしたがって背の低い家具を置くようにすると遠近感が強調されて奥行きを広く感じることができます。
あとは意外なところでいうと、カーテンの長さが足りない、もしくは長すぎるようなお宅も結構あります。カーテンを短すぎず、かといって床にこすらない程度の適切な長さにするだけでも整って見えますね。

―自宅のコーディネートを変えたい時、どのようなところでインテリアグッズを購入したりアイデアを得るといいですか。

家具屋さんがいちばん良いと思います。家をひきたてるのは家具、家具をひきたてるのは小物だと思っているのですが、空間や家具の良さをシーンとして演出してあるのが家具屋さんの魅力です。インテリアに詳しい人なら家具単体を見て「どのようなシーンやコーディネートなら、この家具の魅力を活かせるか」というのが分かると思うのですが、一般の人が家具だけを見てイメージするのは難しいときがあるので、シーンを想定できるような見せ方になっている必要があると思います。やはり、それがうまく設定されているのが家具屋さんですね。
いまの家具屋さんはライフスタイルショップといって、家具を陳列するだけではなく、ライフスタイルに関するグッズまで揃えて提案しているお店が増えてきています。例えばダイニングテーブルのセッティングに照明や朝食の食器などを合せたシーン展示がされていますよね。そういうお店を参考にすると、展示されている家具をどのように生かして、小物は何を合わせるといいか、というような具体的なイメージがしやすくなると思います。

小島真子(MAKO)さんプロフィール
株式会社 Laugh style代表 インテリアコーディネーター
モデルハウスやサロン、オフィス、ホテル、個人宅のインテリアコーディネート・スタイリングをベースに、近年では法人企業とコラボレーションして商品や店舗のプロデュースを行う。
日テレ『ヒルナンデス』、TBS『Nスタ』、テレビ東京『インテリア日和』他、ラジオ・雑誌・WEB等数多くのメディアに出演。また、『積水ハウス』等法人でのセミナーや、『日本経済新聞』等への執筆活動など幅広く活動中。

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