b8ta Japanは2015年にサンフランシスコで創業されたb8taとベンチャーキャピタルEvolution Ventures(カリフォルニア州サンフランシスコ、創業パートナー・シャージール・ハサン氏)の外資系企業です。「サービスとしての小売(RaaS:リテール・アズ・ア・サービス)」と呼ばれるソリューションを提供している会社です。
今回はそんな話題のサンフランシスコ創業スタートアップb8ta Japanカントリーマネージャー北川卓司さんにコンセプトや魅力、ご自身のキャリア論まで幅広くお話をお伺いしました。
―b8taのコンセプトについて詳しく教えてください。
弊社b8taはベータと読みます。2015年にアメリカ、サンフランシスコで創業しまして、1号店はパロアルトと言うサンフランシスコから南に40分ほど車で行ったところでオープンしています。現在では、アメリカに3店舗、ドバイに1店舗、日本に2店舗の直営店を展開しています。
弊社のミッションは、「Retail Designed for Discovery」で、日本語にしますと「リテール(小売り)を通じ、人々に新たな発見をもたらす」と言うものです。いわゆる販売を主目的に置く店舗ではなくて、新しい発見とか体験をしていただくスペースを作っていきたいと言うのが我々のミッションです。
ビジネスモデルは、「RaaS (リテール・アズ・ア・サービス)」と呼んでいますが、日本語にしますと「サービスとしての小売り」とご説明しています。店舗内には、1区画約60センチ x 40センチが、合計約100区画、店舗毎にご用意しています。こちらに出品いただく一連の流れを、オンラインで一元的に管理するサービスになっています。
オフラインで出品するに当たって、通常であれば、仮にお店を自社で作る際には施工、デザイン、スタッフを採用してトレーニングするのが一般的ですが、それら全てをサービスとして弊社で担当させて頂き、オフラインの出品を手軽にご利用いただけるビジネスモデルとなっています。
また、行動データを取るため天井にカメラがたくさん付いているのも特徴です。来店者数、年齢層、性別などのデモグラフィックデータ、他の出品ブランドとのベンチマーク、出品区画の前を通った客数や5秒以上立ち止まった客数、商品をデモンストレーションした客数を出品者にデータでフィードバックしています。もちろん、お客様に関する商品の意見や反応などの定性的なデータもフィードバックしているのですが、それら全てをまとめて月額のサービスとして提供するビジネスモデルとなっています。
―創業の経緯を教えてください。
弊社は、シリコンバレーで始まったサービスです。そもそも創業者達の出身は、Googleが買収したネストと言うスタートアップ企業です。彼らの創業時のエピソードとして、当時、彼らが開発したプロダクトが素晴らしいものだったのですが、実際店頭に足を運んで見たところ棚の下の方の、箱に入れたまま陳列されていたというエピソードがあります。
そのプロダクトというのがスマートホームなどの、これまで世の中に無い新しいコンセプトのものでした。そちらのプロダクトは実際に手に取って試さない限りは、その商品の本当の良さが分かりません。彼らは、これと同様の問題を抱えている企業がいくつもあるだろう、そのような新しいコンセプトの商品をディスプレイできるような店舗を作ることで、課題解決ができるであろうと考え、事業が始まりました。
シリコンバレーという土地柄でガジェット系のスタートアップがすごく多かったため、市場からのニーズとマッチしたので大きく成長することができました。
―なぜb8taは日本へ上陸したのでしょうか?どのような目的があったのでしょうか?
日本への上陸に関しては今回、アメリカ、ドバイに続き3拠点目です。2016年、オープンから大体1年後、日本からシリコンバレーに視察に行く企業が増えて、その視察コースにb8taを加えていただける機会が多くなりました。どうやら日本の方はb8taの扱う商品も好きそうだし、ビジネスモデルにも興味をお持ちの方が多くいるのだなと、創業者達はその時から感じていました。そういった背景から、日本を目指そうかと言う事になりました。日本進出のタイミングは、2020年の東京オリンピック前が良いのではという決断をしました。
―日本以外に展開している国はどこでしょうか?アメリカと日本のb8taの違いはあるのでしょうか?
基本的には全て一緒で、ミッションの通り、新しい発見をもたらすことを第一にしていますが、日本特有の特徴もあります。例えば、商品選定の間口は狭めずにしていこうとしています。結果として、IoT系のガジェットから、BtoC向けのコスメ、靴などのアパレルまで幅広い商品を備えています。なぜかというと、一人でも多くのお客様に新しい発見を提供したいと考えているからです。店舗の中の商品にバリエーションを持たせ、多岐にわたる様々なカテゴリーを雑多に陳列することで、面と面、線と線が結びつき、特別な新しい発見が創出された結果、空間自体が面白いものになると考えています。
―アメリカや日本では、b8taはどんな企業とどんなコラボレーションをされているのでしょうか。
Googleとは、アメリカや日本でもコラボレーションしました。日本では、b8ta Tokyo – Yurakuchoのエクスペリエントルームと呼ぶ半個室に出品いただいています。。アメリカでは、トレラーを改造し、グーグルのスマートフォームを楽しめる空間を作りました。西海岸でサンフランシスコからラスベガスまでの道中にある、b8taの店舗をまわるツアーも実施したことがあります。
―企業側がb8taとコラボレーションを行うにあたって、どんなことに気をつければ良いでしょうか。
オフラインのイベントが現在はやりにくい状況ではありますが、今後はイベントからコラボレーションを積極的にやっていきたいと考えています。
最近のアメリカの事例では、オンラインのキュレーションサイトと一緒にコラボをし、サイト上に普段は並ぶ商品がb8ta店舗内に集結しました。他にも、フランスのアクセラレータの扱っている商品をサンフランシスコのお店に並べ、アメリカ参入の際のインサイトとして利用してもらうなどもありました。
―生活者は、b8taにどんなことを期待すれば良いでしょうか。
新しい発見と体験を期待していただきたいです。一般にご自身の興味のあるメディア以外に触れることはオンラインでは限界があるのではと考えています。グーグルなどで検索すればするほど、自分の興味のある分野に最適化されていくことになるかと思いますが、自分の興味のアンテナが働かない対象との偶然の出会いに期待する場合は、紙媒体や実店舗などになるのではないでしょうか。b8taでは、同様の発見と体験を是非期待していただきたいと思います。
―北川さんのこれまでのお仕事の経験談を教えていただけますか?b8taのどこが気に入って、参画しようと考えましたか?
数年前に、日本にb8taが参入するかもしれないという話を聞く機会がありました。その際は具体的な話は聞きませんでしたが、ついに昨年の夏に日本へ本格参入することが決まり、是非話をしたいという相談をb8taから受けました。
参画しようと思った理由は幾つかありますが、特に過去の自分の経験からフィットしている点と会社の掲げるミッションに共感できたのが大きな要因です。
小売業界は全体が厳しい状況にあるかと思います。組織で見ると、大企業は部門で業務が分かれがちであると感じていました。前職の外資系家電メーカーでは部門間での業務の細分化が課題でしたが、b8taであればガジェットだけでなく小売全般に波及できる可能性を持つビジネスモデルの将来性にも魅力を感じました。
―日本ではどのように展開しようと考えていらっしゃいますか?
日本市場に向けて、シンプルな空間づくりで統一感を増やしていきたいと考えています。例えば日本の伝統工芸品がその中に入ってくるのは十分考えられると思います。アメリカ本社のブランドガイドラインに厳守して店舗づくりを設計していきますが、もし、何か理由があれば、日本の店舗でも柔軟に対応できるような体制にしています。