インテリアコーディネーターとしテレビや雑誌など多数のメディアにも出演されているMAKO(小島真子)さん。株式会社Laugh style代表としてモデルハウスやサロン、オフィス、ホテル、個人宅のインテリアコーディネート・スタイリングをベースに、近年では法人企業とコラボレーションして商品や店舗のプロデュースを行われています。今回はMAKOさんに、インテリアコーディネーターとしてのキャリアやそのやりがい、自宅のインテリアをアップデートするコツなどについてお話を伺いました。
―インテリアコーディネーターとして、「豊かな暮らし」とはどのようなものだと思いますか。
暮らしの豊かさというのは、心の満足度や暮らしの充実度からくるものだと思います。モノによって豊かさを感じることもありますし、人との関わりにおける豊かさというものもありますよね。たとえば、自分のお気に入りのマグカップで好きなコーヒーを飲むことで充実感を得て豊かさを感じることもありますし、家族と一緒にバルコニーでご飯を食べるのが楽しみという人もいる。どちらにしても空間というものが関わっていて、切っても切り離せない関係にあると思います。結局「暮らしの豊かさ」は心のありようだと思うので、そのために空間をつくっていくことが重要だと思います。食卓にちょっとしたグリーンを置くとごはんも美味しくなるとか、使いやすいスタッキングチェアを使って家族との時間を楽しむようにするとか、空間に注目して暮らしの豊かさを創り上げていくことができると思います。
心理的に充実することが暮らしの豊かさになっていくと考えると、「ていねいに暮らす」というのも大切なことだと思います。最近は時短が流行りですし、スマートスピーカーの「アレクサ」に頼めばいろいろなことが簡単に出来ますよね。けれど全部システムなどに頼ってしまうと生活を楽しむ部分もなくなるかもしれないと思っています。たとえば身体的にハードルがあるのなら自動カーテンを使えばいいですが、元気な人なら「朝起きてカーテンを開け、朝日をあびる」ようなことが、ていねいな暮らしやさらには豊かな暮らしにつながると思います。七夕などの季節の行事も食卓の中に少し取り入れたり、家族みんなで楽しむ時間を持つのも大切ですね。ていねいな暮らしをじつげんするためには「気づき」が重要だと思っています。すべてを自動にしたり他人任せにしてしまうと、自分の視点を変えたり、新しいコトや好きなことに対する気付きを得ることが難しくなると思います。
豊かさのためには、さりげないことでも毎日の暮らしに変化をつけていくことも大切だと思います。トイレの芳香剤をかえたり、飾る花を変えたりとか。たとえば壁紙でも、賃貸やアマチュアの人でも使えるような商材も最近ありますよね。そういうことで少しの変化を起こしていくのも大事だと思います。自分がいる空間に興味を向けてあげると、豊かな暮らしへのヒントが得られるのではないでしょうか。心の豊かさは毎日がすべて同じだと生まれないと思います。すこしでも気持ちを上げたりするために、変化をつけることが必要ですね。
―本サイトは「デザイン」をテーマにしていますが、インテリアコーディネーターとして自由にデザインしたいと思うことはありますか?
ふだん、お仕事でコーディネートするときに、お客さんから依頼されてつくった施工例というのは、わたし自身のデザイン・作品ではないと思っています。仮に依頼主が予算だけくださって、自由にやっていいとなれば作品といっていいかもしれませんが。
結局、コーディネーターというのは、お客さんがつくりたいものイメージしているものを掘り出して組み立てる役割なので、自分が好きなものだけを創り出しているというのとは少し違いますね。実際、組み立てたときに100%の状態でつくってしまうと、住む人が飽きてしまったりその後に変化をさせづらくなる。インテリアコーディネートにおいては「ヒトが住むこと」というのが最も重要だと思うので、住む人による変化が当然ありますし、人のエッセンスがコーディネートを最終的に完成させると思っています。そういう意味では、ふだんのお仕事でも住む人が何も出来ない完成されたインテリアということではなくて、住む人が心地よく味付けできてその後の人生や時間の中で変わっていく余白があるようなデザインを心がけています。
余白があって、心地よい空間をつくってあげると、住む人も思考が変化して「こういうのは合うかな?」などご自身で考えるようになります。コーディネーターの自己満足のために完璧につくるよりも、住む人が考える余白・変化の可能性を残しておいてあげたいと思うので、自分の好きなだけのデザインというよりもお客様の心地よさに合うデザインというものをつくっていくことが楽しいですね。
―いま、多くの企業がデザインの価値を見つめ直し、新しい取り組みにチャレンジしようとしています。
本サイトをプロデュースしているGUMの歯磨きで有名なサンスターが、『「お口」「カラダ」だけではなく、「生活空間」から健康に。』というテーマを掲げ、『カラダがよろこぶ空気。』をコンセプトとした脱臭除菌システム『QAIS -air-』を発売しました。こうした取り組みをどう思われるでしょうか。
サンスターさんといえば歯磨き粉や歯ブラシなどオーラルケアが代表的な商品だと思います。今までの商品はある程度マーケティングを重視して販売されている商品なのかなと思っていたのですが、今回のQAISという商品は会社の思想を大切にして、それを広めたいというような考えのあらわれた商品なのかなと思いました。日用品のメーカーさんが、ちょっと領域を飛び出して空間に関わる商品を考えることは面白いと思いました。視野が広がっていて、新しい挑戦のようで面白さを感じましたね。
QAISをみると、あえて従来の空気清浄機のような価値提示ではなく「カラダがよろこぶ空気。」というキャッチコピーで、差別化・インパクトを出していると思いました。今まで無かったような表現で価値を表してあって、すごく考えられたコンセプト・ブランディングだと思います
―MAKOさんのお仕事の中で脱臭や除菌の課題が出ることはありますか。
ふだんのお仕事の中で、臭いや除菌に関するニーズは多くありますね。いまは室内にペットがいるのは当たり前ですし、ほとんどのお宅が脱臭機や空気清浄機などをお持ちですよね。やはり人の家というのはそれぞれの臭いがします。ペットのいるご家庭は臭いが気になることは多いですね。リフォームの際にアロマや芳香剤のおすすめを聞かれることもあります。それだけ、空間の中で臭いや除菌ということを重視する人も増えているのかなと思います。
―MAKOさんがいま興味を持っていることは何ですか。
最近はいつまでも若々しくいられるにはどうすればいいだろうかということに興味があります。取材やTVの収録など人前にでるときは、メイクさん入ってくれますが、時間がかかるので大変なときもあります。とはいえ自分でヘアメイクを用意するのも大変なので、お化粧以外にも老いを感じさせないような工夫に興味がありますね。芸能人の方は肌を若々しく見せるための美容法やさまざまな工夫を試している方もいらっしゃいますが、どちらにしろベースを自分でつくっていかないといけないですよね。野菜をしっかりとったり、食べすぎに注意したり、元気のもとになる栄養素をしっかり取ったり、というようなことに興味があります。肌のケアのしかたや、筋肉・体作りなど、意識していますね。最近はWebやYouTubeなどの動画で沢山の情報がありますが、自分に合う方法が何なのか、取捨選択して取り入れていきたいと思っています。
具体的に変えたことでいうと、私はもともとアルコールが大好きだったのですが、最近は控えめにするようになりましたね。アルコールとして飲んでいた量を水にかえるようにしたいと思っています。体の変化なのか、アルコールを飲んだ後は寝起きが悪くなったり途中で起きたりするようになってしまったので、毎日晩酌したり酔ってしまうような飲み方はやめました。あと、食生活でいうと、フルーツはできるだけとるようにしていますね。納豆とキムチなどの発酵食品も積極的にとっています。野菜はもともと好きなので、お肉よりも野菜たっぷりの食事がおおいです。基本的には塩コショウとオイルなどを使って、シンプルな味付けを心がけていますね。炭水化物もカレーなど大好きなのですが、バランスよくとっています。仕事上、テーブルコーディネートすることもあるので、料理全般をある程度できるようにしています。
―仕事に関連して、最近興味があることはありますか。
「ワーケーション」というビジネスに興味がありますね。ワークとバケーションの造語で、旅するような感覚や旅先になるような場所で仕事をすることなのですが、今後どのように広がっていくのか興味があります。観光としての広がりもありますし、ホテルや観光地が協力してどのように事業展開していくのか興味がありますね。たとえばアウトドアメーカーのSnow Peakさんもワーケーションの取り組みをされているようなので、アウトドアとコラボしたりすると面白いかもしれないですね。
―在宅時間が長くなっている今、インテリアでできることはありますか。また、在宅ワークを始めた人に、おすすめの工夫はありますか。
まず単純に、いらないものはキレイにしましょう。お家時間が長くいと行動が制限されますよね。さらに物が多すぎるお宅だと、その場所が自分にとって居心地が良くなくてストレスになってしまう。やはり物が積まれているよりは、スッキリしている方がよい空間になるので、片付けから手を付けると良いと思います。物を整理してスッキリしたら、アロマで香りを変えたりするのもいいかもしれません。また、自分が常に目にするところや同じ家のなかでも自分の場所に変化をつけてあげると、気分転換になっておすすめですね。
在宅ワークでもご夫婦がふたりとも自宅で働いている場合、男性が個室にこもっていて、女性の方がダイニングやリビングで仕事をするという方の声を聞きました。とくにダイニングなどで仕事をしていると、皿洗いの残りが目についてしまったり、ちょっとした家事に気がついてやってしまったり、仕事と家事の境目がなくなってしまうようです。生活空間のなかで仕事をしているときは、空間をうまく区切るのは大切かもしれません。
スペースが限られているお宅では、例えばリビングのソファーをフラットソファーにして、リビングスペースとダイニングスペースを物理的に区切ってしまうとか、家具の配置によっては工夫ができると思います。部屋の一角に90cmくらいのデスクとパーテーションを設置したり、壁面に設置するライティングビューローなどの家具で工夫することも可能だと思います。通勤や時間でうまく区切れないところを、簡易的なパーテーションを設けるとか視界で物理的に区切ってしまうことで、在宅ワークの環境も改善できると思います。家具メーカーも在宅ワーク向けのスペースづくりを意識した家具を発売しはじめていたり、アフターコロナ・ウィズコロナの時代にお家のスペースづくりも変わってくるかもしれませんね。
MAKO(小島真子)さんプロフィール
株式会社 Laugh style代表 インテリアコーディネーター
モデルハウスやサロン、オフィス、ホテル、個人宅のインテリアコーディネート・スタイリングをベースに、近年では法人企業とコラボレーションして商品や店舗のプロデュースを行う。
日テレ『ヒルナンデス』、TBS『Nスタ』、テレビ東京『インテリア日和』他、ラジオ・雑誌・WEB等数多くのメディアに出演。また、『積水ハウス』等法人でのセミナーや、『日本経済新聞』等への執筆活動など幅広く活動中。