ユニバーサルデザインフォントとは?

by twistdesign
ユニバーサルデザインのフォント

出典:モリサワ

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ユニバーサルデザインとは、障害の有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、たくさんの人々が利用しやすいように、環境をデザインする考え方です。1980年代に登場して以来、さまざまな環境や製品にこの考え方が応用されています。そこで今回は、最も身近な、「ユニバーサルデザインフォント」についてご紹介します。

●ユニバーサルデザイン(UD)フォント とは

ユニバーサルデザインフォントに厳密な字形の定義はありません。一般的に、視力に関係なく誰もが読みやすく、小さくても判別しやすいデザインが施された書体が各メーカーからリリースされています。

通常、書体におけるタイプフェース(デザイン)は、多くの人が“その文字を正しく認識できること”を条件とし制作されており、多くのメーカーの書体はその条件にさまざまなデザイン的特長を加え制作されています。つまり市場で販売されている一般的な書体にも、ある程度のUDの要素が備わっていると言うことです。

しかし、その中でも読みやすい・読みにくい書体は存在します。特に弱視や読み書き障害(ディスクレシア)、知覚過敏を持つ人にとっては、その読みにくさは倍増します。千差万別のフォントの世界の中で「誰もが読みやすい」という機能が最も備わったデザインが「ユニバーサルデザインフォント」なのです。

明朝体よりゴシック体

みなさんも日常的にプレゼン資料などではゴシック体を選んだり、長文なら明朝体を選んだり、状況によって見やすい文字を無意識に選んでいると思います。タイトルや見出しのような短い文章はゴシック、長い文章は明朝体と区別しているものが一般的です。

しかし、ユニバーサルデザインの観点では長い文章を書く場合にもゴシック体を使うことが推奨されます。視力が弱い人にとって明朝体は線が細すぎて見えにくく(例:MS明朝)、視覚過敏の人にとっては明朝体の細い部分を認識しにくかったり、縦横の線の太さの違いやはらいやハネなどが刺激になったりします。

ただし、長い文章に太いゴシック体(例:MSゴシック)はNGです。あくまで、細めのゴシック体(例:游ゴシックのRegular)を使用するようにしましょう。

ゴシック体

ユニバーサルデザインフォントのメーカー

UDフォントの中でもパイオニア的存在がイワタです。リモコンの文字を見やすくする目的で、イワタとパナソニックの共同開発により2006年「イワタUDゴシック」が製品化されました。他にも最近は数多くのUDフォントがリリースされており、モリサワやSCREEN、タイプバンク、モトヤなどが有名です。

●おすすめのユニバーサルデザインフォント

ここからはおすすめのユニバーサルデザインフォントをご紹介します。OSや明朝体・欧文などのタイプ、無償利用できるものなど様々なユニバーサルデザインフォントがあります。

Windowsで使えるユニバーサルデザインフォント

Windowsにも標準搭載されている「メイリオ」という書体はユニバーサルデザインを意識して作られたフォントです。UDフォントが使用できない場合におすすめ。

またモリサワの「UDデジタル教科書体」はWindows 10からに標準採用されていますので、Windows10をご利用の方におすすめです。

Windowsで使えるユニバーサルデザインフォント

無料で使えるUDフォント

多くのUDフォントは有償なのですが、モリサワが無償のユニバーサルデザインフォントを提供しています。「BIZ UDゴシック」と「BIZ UD明朝」という名称で、会員登録さえすれば無料で使用可能です。等幅とプロポーショナル版(読みやすく文字により幅が変えてある)があります。こういったフォントを通じて、フォントについての関心やユニバーサルデザインという考え方が広まっていくことが期待されています。

なお、WindowsならばOSを最新版にすれば自動的にUDフォントがインストールされているはずです。

・BIZ UD ゴシック/BIZ UD明朝

BIZ UDゴシック・明朝は、「わかりにくい」、「読みにくい」、「読み間違えやすい」を解消するためにデジタルフォントメーカーの代表格であるモリサワが開発したビジネス文書向けのフォントです。メイリオなど他のフォントで起こる行間が不自然に広がってしまうという心配がないのが特徴です。

無料で使えるUDフォント

・BIZ UDP ゴシック/BIZ UDP明朝 Medium

BIZ UDP ゴシック・明朝 Mediumは、等幅であるBIZ UDゴシックに対して、欧文やかな文字が可変される、プロポーショナル版のフォントです。欧文やかな文字が多くなる文章に用いることで、より読みやすく、わかりやすくなる工夫がされています。文章に使われる文字に応じて等幅とプロポーショナル版を使い分けるのがおすすめです。

欧文のUDフォント

欧文フォントならSegoe UI(Windowsに標準搭載)やFrutiger(有償)というフォントが判読性の高いフォントです。他にもいくつか使いやすいフォントをご紹介します。

・UDデジタル教科書体 欧文 Regular

モリサワの「UDデジタル教科書体 欧文 Regular」は、文部科学省の英語教材の字形に準拠した書体で、鏡文字と間違えないように左右多少の形を避ける、なるべく少ない画数でかけるなどの工夫がされています。ロービジョン、ディスレクシアの児童にも読みやすいよう配慮されています。

欧文のUDフォント

出典:モリサワ

・UDDigiKyoLatin

UDDigiKyoLatinとは2020年度からの学習指導要綱に沿って作られた文部科学省の英語教材に使われている字形に準じたデザインの欧文フォントです。さらに、各出版社、実際の教育現場で働く先生からの要望も反映し、児童が不便を感じない工夫がされています。

明朝体のUDフォント

基本はゴシック体がおすすめですが、文体によってやはり明朝体がよいという場合もあります。そんな時にはMS明朝を使うのは避けましょう。MS明朝は全体的に細めで縦線と横線の幅の差が大きく、弱視の人にとっては太い部分だけが目立って見えてしまうため、ユニバーサルデザインの観点からおすすめできません。ここでは明朝体のおすすめUDフォントをいくつかご紹介します。

・游明朝体

游明朝体は太めで縦横の幅の差が比較的少ないのが特徴です。

明朝体のUDフォント

・イワタUD 明朝R

UDフォントメーカーのイワタが、視認性を高め、縦横線の比率を考慮して開発した、ちらつきの少ない目に優しいフォントです。印刷後はもちろん、画面表示にも対応したかながデザインされているのが特徴。また、UD明朝の漢字に合わせてデザインされたかな文字が3種類追加され、バリエーションも豊富です。

・UD黎ミン

UD黎ミンとは、文字が書かれた環境によって見えづらさがデメリットとされた、明朝体独特の細い横線に太さを出し、扱いやすく設計した明朝体です。明朝体の美しさをそのままに、必要な部分にだけ細かく横線を調整した現代的でスマートなデザインが特徴。

欧文はシンプルに、かなは大きめに作ることで文字幅に差が少ないため縦組、横組両方の並びが美しく見えるのがポイントです。大人っぽい印象を与えたい文章にも適しています。

・イワタUD新聞明朝

イワタUD新聞明朝とは、新聞読者の高齢化に伴い急速に進んだ新聞紙面の大文字化のニーズに対応したフォントです。新聞の小さな文字でもちらつきが軽減される工夫がされています。大文字化によってかな文字まで拡大されてしまわないように、漢字とかなの大きさと太さのバランスを重視。読みやすさに加えてバランスの整った美しい紙面が表現できます。

「ウロコ」や「ゲタ」と呼ばれる文字の装飾を最小限におさえることで実現した、太さだけを強調しないのびのびとした画線も特徴。新聞の紙面を再現したい場合にもおすすめです。

丸ゴシック体のUDフォント

子どもが読む文章や、難しい内容の資料などをつくる時は、文章が柔らかく優しく受け止められる丸ゴシック体もおすすめです。特に知覚過敏の人にとっては角が少ない丸ゴシックは読みやすいフォントと言えるでしょう。

ただし、WindowsやMacに標準搭載されている丸ゴシック体は、UDの観点からはおすすめできないのが現状です。ここではおすすめの丸ゴシック体のUDフォントをご紹介します。

・源柔ゴシック

源柔ゴシックとは、GoogleとAdobeが共同開発した「源ノ角ゴシック」の角を丸め、丸ゴシック風にしたフォントです。優しい印象で、子ども向けのポスターなどにもおすすめです。

出典:kyokopanda

・TBUD丸ゴシック

TBUD丸ゴシックとは、文字の骨格が柔らかく、親しみやすい雰囲気のUD丸ゴシック体です。画面上での読みやすさを追求したフォントで、「む」「す」などのループ部分をより鮮明にみせ、濁点と半濁点を大きく表示しています。テロップ用に作られた「デジタル丸ゴシック」がプロトタイプとなっており、画面上の視認性を向上させたい場合におすすめです。

・UD新丸ゴ

UD新丸ゴとは、先発フォントである「UD新ゴNT」と同様に、シンプルで明快な字形のかな(丸ツデイ)を採用しています。特徴は丸みを帯びながらも、すっきりとしたかなデザインです。親しみやすさと読みやすさが同時に求められる文章作成などに適しています。

角ゴシック体のUDフォント

注意を促す警告看板や、硬い印象を与えたい文章の場合は丸ゴシックより角ゴシックの方が伝わりやすい場合もあります。角ゴシックにもUDフォントが存在します。

・ヒラギノUD角ゴシック

ヒラギノUD角ゴシックとは、ヒラギノ書体の基本をベースにして、より読みやすくわかりやすい文字の形を追求して開発されたフォントです。ふところが中庸に設計されることで文字の形やバランスを崩すことなく可読性を向上させています。また、読み間違いを防ぐために字面を小さく表しているのもヒラギノUD角ゴシックの特徴です。

その他のUDフォント

その他の専門的なUDフォントをご紹介します。

・UD新ゴ ハングル

UD新ゴ ハングルとは、ハングルフォントのゴシック体です。和文書体である「UD新ゴ」を基本に設計されているため、UD新ゴ同様にふところが広く視認性が高いフォントとなっています。ハングルの造形美やバランスをキープしつつ、横組縦組軸や文字幅も緻密に計算されたフォントです。

和文書体の中でハングルフォントのみが浮かないように、UD新ゴとの統一感も考慮されています。文章全体のバランスも美しく整えたい場合はフォントのシリーズを合わせるのがおすすめです。

・UDデジタル教科書体 学習記号

UDデジタル教科書体 学習記号とは、主に義務教育における算数、理科の学習で頻繁に使用する数字や単位記号、国語で使用する句点付きカギ括弧などを含んだ、学習記号専用のフォントです。

読みやすく間違えにくいのはもちろん、記号だけが不自然に見えないよう、「UDデジタル教科書体」に最適なサイズや太さに調整されています。

UDフォントを使って皆が読みやすい文章を

UDフォントについてご紹介しました。UDフォントには誰もが読みやすい細かな工夫がたくさん詰め込まれています。UDフォントを意識的に使うことでユニバーサルデザインをもっと身近に感じてみませんか?

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