【ユニバーサルデザインとは】
ユニバーサルデザインとは、文化、言語、国籍、人種、年齢、性別、能力、障害の有無などの違いにかかわらず、多くの人々が利用できることを目指した、製品、サービス、環境、建築、設備、情報をデザインすることであり、またそれを実現するための過程です。1980年代に登場した言葉で、現在は様々な物事にユニバーサルデザインが採用されています。
【ユニバーサルデザインの7原則】
(1)だれにでも公平に利用できること。
(2)利用する上で柔軟性が高いこと。
(3)使い方が簡単で分かりやすいこと。
(4)必要な情報が理解しやすいこと。
(5)ちょっとしたミスが危険につながらないデザインであること。
(6)身体への負担が少なく、力がなくても楽に使用できること。
(7)誰にでも使える十分な広さと大きさがあること。
【ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い】
バリアフリーは、障害者・高齢者などに配慮されたデザインです。例としては、車椅子利用者用駐車スペース、メロディ信号機、階段の横に設置されたスロープなど、障害者や高齢者に限定されたものを指します。これに対し、ユニバーサルデザインの基本的なコンセプトは、できるだけ多くの人が利用可能であるデザインにすることです。障害の有無、年齢、性別、国籍の違いをはじめ、一時的に車椅子に乗る必要がある人や、一定期間ベビーカーを利用している人など、様々な人が利用しやすいようにデザインすることがユニバーサルデザインなのです。このため、普及の方法も大きく違います。バリアフリーは必要不可欠なことを法律等で規制する事で普及させる「行政指導型」であり、ユニバーサルデザインは、自ら良いものを推奨する「民間主導型」のため、大きく異なっております。
【ユニバーサルデザイン製品とは】
上記の7原則を大量生産される1つの製品にすべて取り入れることは現実的に難しいため、商品は7原則すべてではなく、いくつかが採用されているものがほとんどです。ただし、現在、3Dプリンティング技術やIoT技術を大量生産品に対して組み合わせることで、個別のユーザニーズへの対応の可能性が高くなっています。
身の回りにあるユニバーサルデザイン商品は気づいていずとも色々あります。斜めドラム式の洗濯機は、大人だけではなく、子供や車いすの方でも、洗濯物の出し入れが楽にできます。最近の電気ポット、電気ケトル、加湿器等にはマグネット式のコンセントがついていて、コードに足を引っ掛けてもすぐに外れるため、ポットが転倒して熱湯で火傷をするといった事故を防ぐことができます。ラベルを見なくてもボトルに触るだけで中身がわかるよう、側面に突起がつけられたシャンプーボトルは、視覚に障害を持っている人や極度な近視の人が、シャンプーのボトルとその他のボトルの区別をつけることができます。
【ペットボトルのユニバーサルデザイン】
多くの人々が、毎日手にするペットボトルにもユニバーサルデザインの考え方が配慮されています。コンビニやスーパーマーケットに並ぶ数多くのペットボトル。その全てが違う形なのではないかと思えるほど、現在ペットボトル容器の形状は多種多様です。進化していたのは形状だけではなく、約10年の間に、容器は軽量化し、様々な面において使いやすさが増しました。ペットボトルには、様々な大きさがありますが、特に重くて注ぎにくい2ℓのペットボトルに対して、各飲料メーカーが使いやすさ見えやすさに取り組んでいます。どのような工夫がされているのか、詳しくご紹介させていただきます。
ペットボトルのユニバーサルデザイン① くびれ
出典:楽天市場
ペットボトルの「くびれ」は、指が掛かって持ちやすいようにつけられています。持つ指の側面部分を引っ掛けて持ち上げられ、指の関節がフィットして指を引っ掛けて注ぐことができ、複数の指が「くびれ」に収まる等、子供からお年寄りまで持ちやすく注ぎやすい、ユニバーサルデザインの形状です。また、肩の部分ある適度な凹凸により、キャップを開ける際、よりボトルに指がかかって押さえやすく、すべりにくいため、指が痛くならずに、誰もがより少ない力で簡単にキャップを開けることができます。
ペットボトルのユニバーサルデザイン② 軽量化
出典:楽天市場
ペットボトルは液体が入っているため、特に2Lの物は、子供、高齢者、手の力が弱い人などには持ち上げて注ぐに一苦労します。そのため各メーカーでボトルの耐久性を残しつつ、少しでも軽くする研究をしています。特に、コカ・コーラから発売されている「い・ろ・は・す」「綾鷹」「爽健美茶」などのお茶および水製品の2LPETボトルには、2014年よりつぶしやすさと注ぎやすさを両立した「ペコらくボトル」が採用されています。重量は同量容器比較で35gから29gと、17%も軽量化されたそうです。ペットボトルを軽くすることは誰にでも使いやすいユニバーサルデザインなだけではなく、使用樹脂量を減らした環境にやさしいボトルでもあります。また、軽量化させつつボトルの強度を保つ必要があるため、底に小さなくぼみを付けるといったユニバーサルデザインを強化するための細かい設計がされています。
ペットボトルのユニバーサルデザイン③ はがしやすいラベル
出典:楽天市場
ペットボトルを飲み終わった後は、キャップとラベルを外してごみを分別しなければなりません。ペットボトルのラベルにはミシン目がついて、簡単にはがせるようになっています。また、感熱接着ラベルを使用しているペットボトルもあります。ラベルをボトル本体に巻いた状態で熱によって1箇所のみ貼り付けするラベルです。以前より誰にでも簡単にラベルをはがせるユニバーサルデザインのため、ストレスが軽減され、もっと多くの人がごみの分別のルールに従うようになっています。特に、おーいお茶は「はがしやすいラベル」というのを研究していて、従来1本であったミシン目を2本にするなど改良を進めているそうです。
ペットボトルのユニバーサルデザイン④ 商品表示
ラベルに記載されている商品表示にも、色覚の個人差によらない商品表示の見やすさが工夫されたユニバーサルデザインが採用されています。以前は、柄や写真に文字が重なっていましたが、現在は白いラベルの上に黒い文字が印刷されたものがほとんどになっています。これは、高齢で目が見えづらくなっている方や、色弱の方などにとって文字が読みやすいユニバーサルデザインです。
ペットボトルのユニバーサルデザイン⑤ キャップ
出典:楽天市場
アサヒ飲料がペットボトルに使用する「エコグリップキャップ」は、キャップの部分が通常の丸い形ではなく、波型の凹凸がついていて、キャップに力がかかりやすく、お子様、ご高齢の方、女性でも開けやすいユニバーサルデザインです。これにより、使う原料も以前より10%減らすことができたため「エコグリップキャップ」と名付けられたそうです。
【おわりに】
ペットボトルに採用されているユニバーサルデザインについて紹介させていただきました。1つのデザインの中にこれだけ様々な工夫が詰め込まれたペットボトル、興味深いですよね。飲み物は人が生きるために欠かせません。その飲料が入っているペットボトルも、もっと様々な人がなるべく同じように使えるようになる必要があります。現在、各飲料メーカーは、ユニバーサルデザインと環境問題に大変力を入れているようです。今後は、ペットボトルをじっくりと観察して、どこが使いやすくなったのか、様々な人の立場から考えて、どうすればもっと使いやすくなるのか考えてみるのも面白いかもしれませんね。