デンマーク家具はなぜ魅力的なのか?人気の理由は木材!?

by twistdesign

【魅力的なデンマーク家具】

近年、北欧インテリア・家具は人気の衰えを知りません。そして、日本で紹介される北欧家具で、代表的なものはデンマークのデザイナーによるものです。デンマークでは昔から「ヒュッゲ」という言葉が大切にされています。「ヒュッゲ」とは、英語ですらも直訳できる単語がない独特なニュアンスがありますが、イメージとしては「幸福」や「心地よさ」を表す言葉です。昨今ではこの「ヒュッゲ」が欧米でも注目を集めており、日本でも雑誌やテレビ番組などで特集されるようになってきました。デンマークは、その「ヒュッゲ」に則り、集中して質の高い仕事をした後は残業などせず、空いた時間は家族や友人と家で食事をしたりゆっくり一緒に過ごすのです。そのため、そのようなライフスタイルを豊かにする為に、デンマーク人は家具や食器、日用品 デザインにとことんこだわるのです。そんなデンマークで作られてきた家具だからこそ、世界中の人々が魅力を感じているのです。

デンマーク家具製作で一番重視されていることは機能性や実用性。十分な機能や性能を追い求めてから、美しさを追求します。だからと言ってデザインが手抜きなわけではありません。デンマーク家具と言えば、なめらかな曲線を活かした美しいフォルムが特徴的であり、大きな魅力のひとつでもあります。徹底的に完成度を高めた無駄のないデザインながら、決してつまらないデザインにならないデンマーク家具のデザインは、そのディティールの完成度の高さからきています。

【デンマーク家具の魅力の1つは木材】

木の風合いを活かしたナチュラルで温かみのあるデザインもデンマーク家具の大きな魅力です。北欧家具の多くは高級木材として知られるチーク材が使われており、その美しい褐色の木肌と繊細な木目が、あたたかくやわらかな雰囲気を醸し出しています。また、資材が豊富だった時代に作られたデンマークのヴィンテージ家具にはまれにローズウッドやマホガニーのような、現在では伐採が規制され、なかなか手に入れることのできない高級素材が使われた家具があります。

デンマークの家具というと1940年代から60年代の約30年にデザインされたものの印象がとても大きく、木材を研究し、駆使したのもその時代です。特に、ハンス J. ウェグナーとボーエ・モーエンセンは木材に対するこだわりが強いデザイナーでした。ハンス J. ウェグナーとボーエ・モーエンセンが木材を使用しデザイナーでしたデンマーク家具を見てみましょう。

デンマーク家具の魅力①:ラウンジチェア CH22(1950)


出典:Pinterest

ハンス J. ウェグナーがカール・ハンセン&サンに初めてデザインした椅子コレクションの一つで、美しいオーク材を使用した完全オリジナル版。 デンマークモダン家具の名作としてヴィンテージ市場で高騰を続けるアイコン的な存在の1つです。有機的な曲線を描くアームと、対角線を描くような模様が施されたペーパーコードシートが特徴で、フィンガージョイントや木製クサビなど、随所にクラフトマンシップが見られる椅子です。

ハンス J. ウェグナー(Hans Jørgensen Wegner)1914~2007

日本でもよく知られているハンス・J・ウェグナー。14歳から家具職人の下で修行を始め、17歳の時には木工マイスターの資格を取得しました。20歳のまで家具職人の下で修行しながら、国立産業研究所で木材についての研究もしていたという努力家。23歳の時コペンハーゲン美術工芸学校に入学し家具設計を学び、コーア・クリントのデザイン方法論を学びました。1938年~1942年の間アルネ・ヤコブセンと建築家エリック・モラーの建築事務所に勤め、フィン島東端に位置する都市ニューボの図書館で使用する家具、オーフス市庁舎で使用する家具などをデザインしました。1943年には自身の建築事務所を設立。1946年にはボーゲモーエンセンと合作したインテリアデザインを、コペンハーゲン高級家具師展に出品するなどして活躍の幅を広げて行きました。

その後ヨハネスハンセン、フリッツハンセン社などの家具デザインを多数手掛けます。1940年代、ウェグナーが注目したのは「曲げ木」の技術でした。ウェグナーはこの時期、何枚も曲げ木技術を使ったデザイン画を書いています。しかし、量産することのできないモデルであったため、価格が非常に高く、またデザインが斬新すぎたため、全く売れませんでした。そんな中、カール・ハンセン&サンから機械加工で量産できる家具のデザインの依頼が舞い込みました。ウェグナーが5つのデザインしたCH22、CH23、CH24、CH25、CH26のうち、4つに曲げ木技術が使われています。

素材、特に木材へのこだわりを持ち、家具を創り出したハンス・J・ウェグナーは、生涯で500種類以上ものチェアをデザインした20世紀のデンマーク及び北欧を代表するデザイナーの一人です。1959年にはロンドン王立美術協会から王立産業デザイナー名誉会員の称号が贈られました。彼のデザインした家具は今でも生産され、世界中で多くの人々に愛され続けています。

デンマーク家具の魅力②:Model-157 ダイニングチェア(1952)


出典:Pinterest

ボーエ・モーエンセンが1950年代にデザインしたコレクションの一つのヴィンテージ椅子。フレームにはチーク無垢材を使用し、オーガニックな木目が特徴的です。背もたれも曲げたチーク材でできており、シートはペーパーコードで覆われています。そのシルエットと座り心地にはモーエンセンのデザイン特有のミニマルさと質の高さが見て取れます。また、モダンなエッセンスが確かに感じられ、半世紀を過ぎた今でも高いクオリティを感じることの出来る椅子です。

ボーエ・モーエンセン(Børge Mogensen)1914~1972

ボーエ・モーエンセンは16歳で木工職人に弟子入りし、20歳で木工マイスターの資格を得ました。22歳でコペンハーゲン美術工芸学校に入学し、本格的に家具デザインを学びます。その頃学校で仲が良くなり長年交流を持つのが上に紹介したハンス J. ウェグナーです。また、美術工芸学校を卒後したのち進学した、デンマーク王立アカデミー家具科では、コーア・クリントに師事し、様々な家具の応用や数学的アプローチに基づく家具デザインの方法論を学びます。1942年には、28歳にしてFDBモブラー家具デザイン室の責任者に抜擢されました。

「庶民のデザイナー」として知られるボーエ・モーエンセンは、人々の住宅事情や消費意識などに合わせた家具を追求し、一般庶民が購入できる価格でありながら、質の高い家具を創ることを使命としていました。モーエンセンが数々の試行錯誤を重ねた結果、1947年には、19世紀にアメリカで生まれたシェーカー教団の椅子「シェーカーチェア」をリデザインした、J39 シェーカーチェアを完成させました。背もたれには、大きく湾曲させた幅広の板を使い、すっきりしたデザインの上、生産性の高い椅子です。しかし当時はまだ、一般庶民には受け入れられず、モーエンセンがデザインした椅子が大ヒットしたのは、モーエンセンがFDBモブラーを去ったあとの1950年代になってからでした。その後デンマークでは「庶民の椅子」と呼ばれ、現在でも国民的な椅子として親しまれています。

【現代へと引き継がれるデザイン・デンマーク家具】

1990年に入るとデンマークモダン家具が再び注目を集めだしました。また、デンマークは、新しい方向性として安価な家具より価格帯はやや高くても、品質やデザイン性に優れているうえに、一般庶民にも手が届く家具という方向性を見出します。1999年にはノーマン・コペンハーゲン、2002年にはヘイ、2006年にはムートなど、若手デザイナーを起用した新しくコスパの良い家具をプロデュースするブランドが設立されます。

デンマーク家具の魅力③:ソフトチェア(2019)


出典:Pinterest

トマス・ベンゼンは現在のデンマーク家具デザインを代表するデザイナーで、先ほど記載した新しいブランドのムートでデザイン責任者もしていました。2019年にベンゼンが発表した「ソフトチェア」は、ボーエ・モーエンセンが1947年に発表したJ39 チェアを彷彿とさせるデザインです。無垢のアッシュ材による両サイドのフレームと2本の貫、成形合板のシートと背もたれで作られた椅子です。

このように、1940年代から60年代に世界中で注目されていたデンマークモダン家具は、当時の面影を残しつつ、新しくなり引き継がれていくのです。

【おわりに】

今回は、デンマーク家具の魅力を、特に木材に焦点を当てて紹介させていただきました。楽しんでいただけましたでしょうか?デンマーク家具に一層興味を持っていただければ幸いです。「素晴らしい」だけでは言い表しきれない魅力を秘めたデンマーク家具。いつもと違う視点から見てみると、さらに興味が深まりそうですね。

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