「デザイン」と聞くと「モノ」を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、デザインのなかには「ソーシャルデザイン」と呼ばれる、「モノ」に限定されないデザインが存在します。そこで今回は、日本におけるソーシャルデザイン事例をまとめました。
コロナ対策や企業戦略としても注視されるソーシャルデザインは、一体どのようなものでしょうか?
ソーシャルデザインとは?まちづくりに重要視される理由
ソーシャルデザインとは、通常のデザインとどのような違いがあるのでしょうか。まずは特徴と身近な事例を紹介します。
・ソーシャルデザインとは?
ソーシャルデザインとは、「まちづくり」や「社会づくり」におけるデザインのことです。固定のモノひとつを対象としたデザインを制作するのではなく、インフラ整備などを通して「区画」丸ごとデザインされたもの。
社会全体をデザインすることで、よりよい暮らしに繋がる目的とされています。そのため、ソーシャルデザインは、その地域に関わる市民など多くの人が賛同することが必要です。
・まちづくりで見る身近なソーシャルデザインとは?
私たちは、知らず知らずのうちにソーシャルデザインに触れています。
例えば、
・公園
・ショッピングセンター
・町おこし
などが事例にあげられるでしょう。
どれもモノ単体ではなく、区画全体でデザインに取り組んでいくことがよくわかりますね。
以下では、具体的にソーシャルデザインを取り入れた日本の事例を紹介します。
ソーシャルデザイン事例10選~日本編~
ソーシャルデザインを取り入れたものは、日本にも多く存在します。住んでいる地域に近いものもあるかもしれませんね。それでは早速、見ていきましょう。
・ソーシャルデザイン事例①「Smile」
「Smile」は、スラムダンクやバガボンドの作者として人気の漫画家、井上雅彦さんが行ったプロジェクトです。震災後にさまざまな人の笑顔、つまり「Smile」を集めたもので、Twitterを中心に大きな話題となりました。
社会のひとりひとりを繋ぎ、笑顔にしてくれるイラストもソーシャルデザインのひとつといえるでしょう。
・ソーシャルデザイン事例②「愛媛県道後温泉のストリップ劇場」
歴史ある温泉街のひとつである「道後温泉」。そのなかでも、ストリップ劇場は、戦後の東京で始まった、昔ながらの日本文化です。音楽に合わせて踊り子が舞う姿は美しく、見るものを魅了させます。
また、劇場の造りも幻想的。会場の雰囲気ごとお客様を楽しませてくれる場所です。
・ソーシャルデザイン事例③「TOMO都市美術館」
出典:TOMO都市美術館
TOMO都市美術館は、アーティスト自らが館長を務める次世代エンターテインメント型の美術館です。面白い街に住みたい!をテーマにした作品展を開催予定であり、たくさんの面白い人に訪れてほしいのだそう。
空間を、美術館として展覧に使うだけでなく、トークイベントのようなおしゃべりできるようにも工夫がされています。
・ソーシャルデザイン事例④「和歌山県熊野地方」
熊野地方とは、和歌山県と三重県をまたにかけた自然豊かな地域です。世界遺産の熊野三山がある場所としても有名ですね。そのため、外国人観光客の獲得に現在力を入れており、町おこしを行っています。
外国人の方でも楽しく散策ができるよう、ガイドブックの制作や、宿泊施設の準備など、地域全体を通してソーシャルデザインに取り組んでいます。
・ソーシャルデザイン事例⑤「香川県小豆島」
香川県小豆島は、ソーシャルデザインのまちおこしに取り組んで、見事に成功を収めている地域です。小豆島はオリーブが有名で、まるでジブリ映画「魔女の宅急便」の世界のようだとSNSを中心に話題に。
そのほかに、妖怪アートを使った商店街の町おこしも行っています。妖怪美術館を筆頭に、商店街全体をアートの街に仕立て上げました。その結果、来訪者数は5倍を記録。小豆島のソーシャルデザインを活用したまちおこしは、まだまだ続くようです。
・ソーシャルデザイン事例⑥「クリエイター集団フラーレン」
フリーランスで働く女性だけを17人集めたグループが、「クリエイター集団フラーレン」というプロジェクトを立ち上げています。加入しているメンバーは、みなさん女性でお母さん。巷では”ワーママ”と呼ばれる存在です。
彼女たちの活動は、デザイナーや漫画家、カメラマンなどさまざまです。それぞれの活動を掲載した本も出版予定。
・ソーシャルデザイン事例⑦「風人堂」
風人堂は、岩手県花巻市にある本屋でもありながらミニシアターでもあるお店です。ネットや書店で簡単に手に入るベストセラー本ではなく、読み終わった古本や秘蔵の本を中心として扱います。また、お客様が読まなくなった本を売れるように、書棚のレンタルも行っています。
コンパクトな空間ながら、店主とお客様のどちらもが満足できる仕上がりなのが魅力。現在の花巻には書店の閉店が相次いでいるそうです。そんななか、風人堂さんができることにより、本好きのコミュニティの場ともなりうるでしょう。
・ソーシャルデザイン事例⑧「音戸イロリバHOUSE」
広島県の海沿いに位置する「音戸」は、細い路地裏や古民家が佇む趣ある地域です。広島市から少し離れた位置にある島のため、騒々しい街中から少し離れてゆっくりできるのが魅力。「音戸イロリバHOUSE」は、そんな音戸に惹かれて移住し、ソーシャルデザインを用いた町おこしを行っています。
歴史ある築100年の古民家を再生、カフェや民泊を営んでいます。町の一角にはクリエイターたちが集う場所もあるのだとか。音戸地区全体がローカル体験できる町として、ソーシャルデザインに取り組んでいます。
・ソーシャルデザイン事例⑨「たくらCANVAS」
たくらCANVASは、福井県南越前町にある「たくら」という地区をソーシャルデザインしている団体です。参加している人は、地元の人やたくら地区で企業を考えている人。たくら地区は人口が減少していっている地域で、子どもの数が減っていっています。
そのため、閉園になった保育園を使用して新たな町おこしを提案。広い保育園跡地では、フリーマーケットやカフェなどのイベントを開催しています。
・ソーシャルデザイン事例⑩「Agawa」
「Agawa」は、山口県下関市にある無人駅「阿川」に隣接する商業スペースです。木々が生い茂る閑静な山地を潜り抜けたその先に見える当店は、訪れる人の憩いの場として親しまれています。
取り扱う商品や提供するカフェでは、地元のものを多く採用。生産者と消費者をつなぐ役割も担っているのです。四季の風を肌で感じられるうえ、おしゃれな”インスタ映えスポット”としても注目されています。
コロナで見直されるソーシャルデザイン
2020年2月に世界的に流行した新型コロナウイルス。私たちの生活を一変させました。それに伴って、今までの「当たり前」が見直されるようにもなったのです。そこで登場するのが「ソーシャルデザイン」です。
多くの人が利用する施設内に、パーテーションを設置。買い物の際に無人売買機を設置。など、非接触型のソーシャルデザインへの取り組みが急速に進んでいます。また、都心から地域への移住のきっかけにもなっています。
移住するとなると、UターンやIターンがメジャーですよね。こうした移住者を増やすためには、ソーシャルデザインによる町おこしが必要不可欠です。2021年の今、まさにソーシャルデザインのターニングポイントともいえるでしょう。
ソーシャルデザインの事例に学ぶ。日本は素晴らしい国である
ソーシャルデザインでは、日本はもちろん、世界各国においてそれぞれ特徴があります。日本は四季が豊かで、都心は都心の良さが、地域は地域の良さが詰まった国です。また、歴史も古く、文化や建築物なども丁寧に保存されてきました。
そのため、それらの特徴を活かしたソーシャルデザイン作りがキーになります。私たちも身近なソーシャルデザインを探してみて、取り組みに参加してみませんか?