●北欧デザインの特徴とは?
私たち日本人にとって身近となった北欧デザインですが、その特徴とはどんなものなのでしょうか?北欧デザインとは、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーなどの北欧諸国から発信されたデザインを指します。日本でブームとなってからずいぶん経ちますが、その人気はいまだ衰える気配がありません。最近では、日本独自の世界観と丁寧できめ細やかなものづくり精神が注目され、北欧の有名ブランドが日本の技術やデザイナーとコラボする現象も起きています。
北欧デザインが生まれた背景
北欧デザインが生まれた背景には、北欧の人びとのライフスタイルが関係しているといわれています。北欧というと、冬がとても厳しいという印象がありますね。北欧諸国は緯度が高い場所に位置しているため、冬の夜が長く、一日のほとんどが暗闇に包まれています。例えば、フィンランドの首都ヘルシンキでは、日照時間の最も短い冬至には9時過ぎに日が出て、日の入りはなんと15時台。日照時間は6時間を切ります。冬の日が短いのは日本でも同じことですが、北欧では極端に短いのです。太陽は高く上がらず、夕方のような日差しがずっと続くうえ、曇りやすいので日が出ても暗く、気温も低いまま。地域によっては長く雪が降り降雪量も多いため、人びとは一日の大半を家の中で過ごすことになります。
こうした厳しい生活環境のなかで暮らす北欧の人たちは、家の中でより心地よく快適に過ごすことをとても大切に考えています。シンプルで飽きのこない美しい見た目や長く愛用できる耐久性と高い機能性。これらを兼ね備えた北欧デザインの建築、家具やインテリアなどは、家で過ごす時間を楽しもうとする想いが形となってきたのも特徴といえるでしょう。
自然をモチーフに
さらに、生活雑貨は自然の素材、動物や植物のモチーフ、やさしい色使いなどが用いられた商品が多く、あたたかみのある雰囲気が特徴的。森や湖などの自然に囲まれた風土をもつ北欧ならではのやさしさにあふれています。機能的でありながらも、どこかほっこりと安らぎを感じる北欧デザインは、ナチュラルなインテリアでお部屋をまとめたい人におすすめです。
また、特徴的なのは自然美をモチーフに活かした色使いと、際立った独自のデザインです。産業革命に端を発する合理主義的・機能主義的なデザイン潮流の影響を受けにくかったことが関係しているとも考えられています。北欧はヨーロッパでは辺境の地であったため、工業化の到来がほかのヨーロッパ諸国に比べて遅く、高い技術をもった伝統的な手工業の文化が根強く生き残ってきました。丁寧な職人精神とほどよい合理主義の融合によって、自然素材のモチーフを活かしつつも機能性と耐久性をあわせ持った北欧デザインが発展していったのです。
シンプルなデザイン構成と色使い
デザインの構成がシンプルなのも北欧デザインの一つ大きいな特徴です。シンプルな線や曲線によって構成されることが多く、異なる模様が大量に入ってることが少ないです。模様の種類が少なく、一つの模様を重複して配置されることが多く見られのも特徴の一つとなっています。
また、色使いのシンプルさもポイントで、北欧デザインでは、多種類の色を使用しない傾向があり、数色のみでシンプルにデザインされていることが多いです。線や模様に加え、色使いもシンプルに構成することが大きなポイントとなっています。
●人気のインテリアや生活雑貨に見る
北欧デザインの魅力とは?
シンプル&ナチュラルなデザインのなかにも大胆な柄や色使いが印象的な北欧デザインですが、どのようなアイテムが人気なのでしょうか? 日本で人気の北欧家具や雑貨を以下に紹介します。北欧デザインのもつ魅力を探りましょう。
・北欧デザイン家具
Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
北欧デンマークを代表する家具メーカー、フリッツ・ハンセン。デザインコンセプトは、「シンプル」「機能性」「革新性」「時代の超越性」。多くの優れた家具デザイナーとのコラボレーションにより、素材にこだわった数々の名作家具を生み出してきました。世界中でアイコン的存在となっているアントチェアやセブンチェア、スワンチェアなどが有名です。
出典(すべて):フリッツ・ハンセン
Carl Hansen & Son(カール・ハンセン&サン)
1908年、家具職人のカール・ハンセンによってデンマークのオーデンセに設立された家具メーカーです。1920年代後半からデザイナーとタッグを組んだ商品開発をはじめ、1949年よりスタートしたハンス・J・ウェグナーとのパートナーシップで数々の名作を発表。中でも1950年に発表された「Yチェア」は、世界で最も愛され続けている椅子と言える不朽の名作です。カール・ハンセン&サンの高い技術力が、デザインの具現化と世界中への供給を可能にしています。デンマークだけにとどまらず、北欧を、そして世界を代表するトップ家具ブランドの1つです。
出典:カール・ハンセン&サン
GETAMA(ゲタマ)
1899年、デンマークの海に近い街・ギズステズ(Gedsted)で設立した家具メーカーです。当時はマットレス(Mattres)専門メーカーで、詰め物に海藻(Tang)を使っていたことから、それぞれの頭文字を取って「GETAMA」と名付けられました。現在は、マットレスからソファやテーブルへ、また詰め物も海藻からスプリング、ウレタンフォームへと拡大し、北欧を代表する家具メーカーになっています。ハンス・J・ウェグナーとの共同開発を契機に、彼の高い要求に革新的な技術開発で応え続け、1950年代初頭から数々の名作を世に生み出し続けています。デイベッド「GE258」「GE259」や、ソファシリーズ「GE290」は、ウェグナーの代表作にして世界のベストセラーです。
出典:デニッシュインテリアス
Fredericia(フレデリシア)
Fredericia(フレデリシア)は、1911年創業のデンマークの家具メーカーです。ボーエ・モーエンセンやハンス J.ウェグナー、ナナ・ディッツェルなど北欧を代表するデザイナーの作品から、新進気鋭の北欧デザイナーの作品まで幅広く取り扱っています。
出典:フレデリシア
Artek(アルテック)
アルテックは1935年、アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト、マイレ・グリクセン、ニルス=グスタフ・ハールの4人の若者により設立された家具ブランドです。アルヴァ・アアルトが開発した曲げ木の技法を受け継ぎ、なめらかな曲線が特徴的な「スツール60」を代表に、幅広い種類の家具を展開しています。
スツール60
出典:Artek
・食器ブランド
iittala(イッタラ)
フィンランド、イッタラ村でガラス吹き職人によって創業されました。職人の技を継承するガラスメーカーとして、美しく機能的で高品質な商品を世に送り出し続けています。近年はガラスウェア以外も充実させ、テーブルウェアの総合ブランドとしてラインナップを広げています。
出典:iittala
イッタラのシリーズとしては、カイ・フランクがデザインしたイッタラのタイムレスな食器シリーズ「ティーマ」と、シンプルで丈夫な「カルティオ」のグラスシリーズは、世代を超えて人気のあるロングセラーです。余分なものをそぎ落としたエッセンシャルなフォルムは時代を超えて愛される北欧のクラシックデザインで、どんな食卓にも映える美しさと馴染みやすさ・使いやすさがあります。
出典:ittala
出典:ittala
Rorstrand(ロールストランド)
スウェーデンの王室御用達窯として創業した陶器ブランド。ストックホルムで開かれるノーベル賞受賞式の晩餐会で使用されることでも有名です。伝統とクラフトマンシップによって表現されたロールストランドの食器は、機能的で耐久性に優れ、いつまでも衰えることのない魅力を放ちます。インテリアとしてもキッチンを美しく彩ってくれるでしょう。
出典:Le noble
ARABIA(アラビア)
アラビアは1873年、スウェーデンのロールストランド社が、フィンランドのアラビア地区に設立した製陶所で、1916年に独立しました。北欧、モダンフィンランドデザインの先駆者として世界中の食卓で愛される食器です。アラビアの食器と言われて一番に思いつくデザインはフルーツや花のモチーフが華やかに描かれた「パラティッシュ」シリーズ。ビルゲル・カイピアイネンのデザインです。1969年にデザインされ、一時生産停止されたものの1988年から再び生産が始まり現在まで人気を誇っています。
出典:ARABIA
また、1973年にパターンデザイナーのエステリ・トムラが手掛けた「エステリ」シリーズも人気です。発売当時はカップ&ソーサーのみでしたが、現在はプレートやボウル、ピッチャーなどのシリーズとして展開しています。
出典:ARABIA
ロイヤルコペンハーゲン Royal Copenhagen
ロイヤルコペンハーゲンは、1775年にThe Royal Danish Porcelain Manufactoryとしてジュリアン・マリー皇太后の元に開窯し240年以上にわたる伝統を育んできました。王室と深い関わりがあり、デンマークではもちろん、北欧を代表するブランドです。
熟練したペインターによって、白い磁器の上にハンドペイントされる美しいブルーの柄、ブルーフルーテッドは世界中で多くの人々に愛用されています。また、1908年から一枚も欠かすことなく続くイヤープレートは、冬の美しい風景や世界遺産など、多くのデンマークらしいモチーフをデザインに取り入れ、毎年制作されています。各商品のバックスタンプには王室御用達である証の王冠と、デンマークを囲む3つの主要な海峡が3本の波線でトレードマークとして描かれています。日常使いしやすい定番のブルーフルーテッドだけでなく、クリスマスやイースターなどのシーズナリティのあるシリーズや、結婚式での贈り物など、華やかな場面にも活躍するデザインが多くあります。
出典:ロイヤルコペンハーゲン
・北欧デザイン雑貨、ファブリック
LISA LARSON(リサ・ラーソン)
スウェーデン生まれの女性デザイナー、リサ・ラーソンによって生み出される穏やかで人懐こい表情をしたキャラクターは、誰もが一度は見たことがあるはず。あたたかく、コケティッシュな動物たちが彩る可愛らしい雑貨の数々は、日本のみならず、世界中で多くのファンを魅了しています。
Marimekko(マリメッコ)
1951年創立のフィンランドのファブリックブランド。marimekko(マリメッコ)とは、「小さなマリーのドレス」という意味で、北欧3大ファブリックメーカーの一つです。ポピーの花をモチーフにしたUNIKKO(ウニッコ)に代表されるような大胆で鮮やかなパターンは、自然や動物からインスピレーションを受けたデザイン。インテリア、ファッション、バッグなど、幅広いラインナップを扱います。
出典:marimekko
almedahls (アルメダールス)
1846年スウェーデン、第二の都市ヨーテボリに設立された歴史のあるテキスタイル会社です。170年にも及ぶ歴史の中で生まれた北欧らしいぬくもりを感じるデザインには、どのパターンにもデザイナーが存在しています。人、動物、食卓といった生活に根付いたデザインが、北欧の雰囲気を感じさせてくれます。スウェーデンの家庭でもアルメダールスのキッチン雑貨はとてもよく見かけ、日常生活に溶け込みやすいデザインが特徴です。
KLIPPAN(クリッパン)
KLIPPANは1879年スウェーデン南部の小さな町KLIPPANに誕生した紡績工場からうまれた、世界中で愛されるホームテキスタイルブランドです。「サスティナビリティ、アニマルウェルフェア、天然素材」というポリシーのもと、使い心地の良いリネンやウールブランケット、ストールなどの布雑貨が人気です。オーガニックコットン製のコットンブランケットや、エコウールを使用したストールなど、素材に一切妥協がない高品質の製品が特徴です。やわらかい色合いと落ち着いたデザインの製品が多く、どんなお部屋にも馴染みやすく使いやすいブランドです。
FINLAYSON(フィンレイソン)
FINLAYSON(フィンレイソン)は、1820年に創業された、北欧フィンランド最古のテキスタイルブランドです。約200年もの長い歴史と伝統を持つFINLAYSONは、寝装品、ホームテキスタイルを中心とした質の高い商品によって、国内外の人々におしゃれなライフスタイルを提供してきました。FINLAYSONの商品はフィンランド中のどの家庭でも見られるほど、信頼され広く愛用されています。
出典:Finlayson
ROROS TWEED(ロロスツイード)
ROROS TWEED(ロロスツイード)は北欧を代表するウールブランケットメーカーです。ノルウェー中部にある世界遺産の村、ロロスで作られており、無農薬の牧草を食んで育つ羊の新毛を厳選。紡績、染色、機織り、製品化までの一連の工程を、国内のグループ会社(ラウマ社)と自社にて行い、品質管理を徹底しています。高品質のピュアニューウールで織られたブランケットは、防寒性・保湿性抜群。ほどよいボリューム感がありながら弾力性に富み、しなやかに体を包み込みこんでくれます。汚れに強く、毛玉ができにくい丈夫さも特長で、年を経るごとに愛着を感じるような製品です。
出典:Roros Tweed
●日本で人気の理由
一時のブームではなく、すっかり日本に定着した北欧デザイン。家具やインテリア、雑貨だけにとどまらず、北欧テイスト漂う空間づくりのためのリノベーションや、住宅の外観を北欧風に変身させるリフォームまで、さまざまな事例で私たちの生活に浸透してきています。これほど多くの日本人に愛されるのは、なぜなのでしょうか? その理由の一つに、北欧と日本が似ているということが挙げられます。双方のライフスタイルやメンタリティにどのような共通点があるのか、いくつか紹介しましょう。
北欧デザインのシンプルさ
まず、共通点の一つに、質素倹約を好む点が挙げられます。日本には、「わび・さび」に代表されるような慎ましく質素な暮らしをよしとする風習がありますが、北欧でも同様に、シンプルな暮らしを好み、上質で使いやすいものを長く使う文化が根付いています。モノに親しみを持ち、年月がもたらす味わいや変化を楽しみながら日々を穏やかに暮らすというシンプルな生活感覚がよく似ているのですね。
そして、自然とともに生き自然を尊ぶという価値観も北欧の人びとと日本人のよく似た考え方です。北欧では長く寒い冬が終わると、短く貴重な夏を精一杯楽しむ風習があります。四季の移ろいに身をゆだねその変化を楽しむことは、毎日の暮らしを充実させ、心を豊かにする生き方の秘訣。天然素材を用いて加工しすぎないこと、シンプル且つやさしい色合いでまわりと調和すること、そうした北欧デザインに感じられる自然への心遣いに、私たちは共感を覚えるのかもしれません。
温かみを感じる木製家具
また、温かみを感じさせる木への愛着が強いことも日本と北欧の共通点といえます。国土面積に占める森林面積の割合が高い世界の上位3か国は、フィンランド、日本、スウェーデン。日本も北欧も国土の多くを森林が占めています。そのため、木造の住宅が一般的で、木材を用いた家具が多いという特徴がよく似ている点です。ともに、素材を知り抜いた高い木工技術を現代まで受け継ぎ、使いやすく温かみのある家具や建物をたくさん生み出してきました。日本の木造建築と北欧の木製家具はとても相性がよいため、コーディネートがしやすく、誰にでもかんたんに素敵な住空間がつくれるというのも北欧デザインが人気の秘密です。主張しすぎず控えめで、自然との共存を叶える北欧デザインは、日本人のライフスタイルにしっくりと馴染み、温かみのある居心地のよさを感じさせてくれるはずです。