デンマークの家具ブランド10選!全盛期から現代までつづく人気のひみつとは?

by ryo.animal

日本でも人気が高い北欧家具。特に「名作家具」と呼ばれる家具たちにはあこがれてしまいますよね。でも実はそのほとんどがデンマークのものなんです。

今回はそんな名作家具の宝庫、デンマークの家具ブランドをご紹介!

デンマーク家具の歴史は、萌芽期(1910~30年代)・黄金期(40~60年代)・衰退期(70~90年代中頃)・再評価期(90年代中頃以降)というように分類されます。

現在のデンマーク家具は、厳しい衰退期を乗り越えてきたブランド経営者、デザイナーたちのたゆまぬ努力によって支えられてきました。そしてその理念は若いデザイナーたちが引き継ぎ、後に続いているのです。

そのパワーの源と現在まで続く人気のひみつを、ブランドの歴史や概要から紐解いていきたいと思います。

 

デンマークの家具ブランド①:Carl Hansen & Sun(カールハンセン&サン)

出典:Pinterest 「Yチェア」

1908年に家具職人カール・ハンセンによってデンマークのオーデンセに開かれた小さな工房、それが後の「カールハンセン&サン」です。以来100年以上にわたり、クラフトマンシップに則った美しい家具を作り続けてきました。デンマークの老舗家具ブランドとして確固たる地位を築づき、日本でも根強い人気を誇っています。

カールハンセン&サンの歴史の中でも一番の転機は、北欧デザイナーの巨匠ハンス J.ウェグナーとの出会いでした。二代目の社長であったホルガー・ハンセンが、当時まだ無名であったウェグナーの才能を見いだし、社運を託したことが今の成功につながったのです。

カールハンセン&サンと協働を始めたウェグナーは、名作として知られる「Yチェア」をはじめ、次々と名作家具を発表します。いずれも高い独創性と、人が作ったとは思えないほど、ナチュラルで美しいフォルムを持った家具たちでした。それはウェグナーの斬新なデザイン力と、カールハンセン&サンの確かな製作技術が見事に融合した結果だったといえます。

ウェグナーは生涯で500点にもおよぶ家具製品をデザインしましたが、現在その内の100点をカールハンセン&サンが販売しています。

 

デンマークの家具ブランド②:FRITZ HANSEN(フリッツハンセン)

出典:Pinterest 「セブンチェア」

フリッツハンセンは1872年に創業したデンマークの老舗ブランドです。創業当初から高いクラフトマンシップを追求しながら、世界中のアーティストやデザイナー、建築家たちとコラボレーションし、北欧モダンを体現し続けてきました。

コラボレーションした中にはアルネ・ヤコブソン、セシリエ・マンツ、ハンス J.ウェグナー、ポール・ケアホルムなど名だたるデザイナーが連なっています。特に「セブンチェア」や「エッグチェア」に代表されるアルネ・ヤコブソンの名作チェアたちは、今でも世界中の人々から愛され続けています。

現在ではそれら当時の名作と新しいデザインを共存させ、家具だけでなく照明やアクセサリー小物などもそろうインテリアショップとして世界中で展開。

本店のコペンハーゲンをはじめ、サンフランシスコ、ミラノ、東京など85ヶ国以上で2,000店舗以上も持つ、まさに「世界をリードする家具ブランド」として確固たる地位を築いています。

 

デンマークの家具ブランド③:GETAMA(ゲタマ)

出典:Pinterest 「GE290」

ゲタマは1899年にデンマークのギズステズ(Gedsted)という、海に近い街で設立されました。当初は詰め物に海藻(Tang)を使ったマットレス(Mattres)の専門メーカーで、それぞれの頭文字を取り、「GETAMA(ゲタマ)」と名付けられました。

1910年頃から少しづつ家具製造も始めましたが、ゲタマもまたハンス J.ウェグナーと出会ったことで大きく変わり、1950年代から本格的な家具製造を始めます。そしてデイベッド「GE258」、ソファ「GE290」などの名作家具が誕生したのです。それらは世界的なベストセラーになり、ゲタマの名前を世界にとどろかせました。

特にソファ「GE290」は日本でとても人気が高く、多くの日本メーカーが似たラインのソファを販売するほど。日本で北欧ビンテージのソファといえば必ずと言っていいほどゲタマの名前があがります。

そういったビンテージラインの他にも、モダンな空間に合わせた近未来的なデザインも扱う、北欧を代表するブランドです。

 

デンマークの家具ブランド④:eilersen(アイラーセン)

出典:Pinterest 「ストリームラインソファ」

アイラーセンは「デンマークで一番売れているソファブランド」といわれています。その秘密は”120年におよぶ座り心地の良さの追求”です。

トレードマークの馬車が示すとおり、アイラーセンは1895年にアンデルセンの故郷、オーデンで始まった馬車製造業をもとにしています。当時の道はひどい悪路で、アイラーセンは自然と座席の「座り心地の良さ」を求めたのです。

馬車の時代が終わると、バスのシート製造へと移行しましたが、その姿勢は変わることはありませんでした。バスの座席に初めて”クッション性”を加えたのもアイラーセンです。

1940年代から家具製造に進出し、以来アイラーセンは高品質で快適なソファをつくり続けています。アイラーセンのソファは、クッションに性質の異なる素材を何層も組み合わせる「多重構造」を使用。それにより究極の座り心地が実現し、「中が見せられるほど美しいフレーム」だと賞賛されました。

また「My eilersen」というセミオーダーシステムを持っているため、豊富なデザインから自宅にあったソファを選べるもの人気のひみつです。

日本では「ストリームラインソファ」が特に人気で、どんなインテリアにも合うシンプルモダンなデザインと、最高の座り心地の良さが楽しめます。

 

デンマークの家具ブランド⑤:One Collection(ワン コレクション)

出典:Pinterest ペリカンチェア

1990年、イヴァン・ハンセンとハンス・ヘンリク・ソーレンセンが前身である家具メーカー「ハンセン&ソーレンセン」を創業しました。

1998年からは北欧の巨匠、フィン・ユールのイスの復刻をはじめ、次第にバリエーションを増やしていきます。そして2007年に、それまではフィン・ユールの復刻家具のブランド名であった「ワンコレクション」と社名を変えました。

ワンコレクションの家具は、家庭用というよりはオフィスや商業施設向けのものが多く取りそろっています。また「ソファ No.57」、「ペリカンチェア」、「ポエトソファ」など、ほとんどのフィン・ユール代表作ライセンスを保有していることで有名です。

その品質はフィン・ユール婦人から太鼓判を押されるほど。近年デンマーク家具デザインが再評価されてことによって、フィン・ユールの作品も再注目されています。

 

デンマークの家具ブランド⑥:PP Mobler(ピーピーモブラー)

出典:Pinterest 「ザ・チェア」

ピーピーモブラーは1953年にデンマークで創業の小さな工房からスタートしました。「高品質デザイン家具」と謳うとおり、その製品はどれも何世代に渡って使えるほどの耐久性とデザイン性を兼ねそろえたものばかり。技術的にも職人の熟練技がないと作れない製品が多く、まさに一生物の家具を撰ぶにふさわしいブランドです。

その世界屈指の家具製造技術は、巨匠ハンス J.ウェグナーとの出会いによって芸術品にまで高まり、歴史に残る名作チェアを次々と誕生させました。

特に有名なのは、1960年のアメリカ大統領選でジョン・F・ケネディと、リチャード・ニクソンがテレビ討論会で使用した「ザ・チェア」です。

あまりの座り心地の良さに感動したケネディが「これぞイスの中のイスだ!」と表現したことからその名がつきました。

1970年代から次第に北欧家具の人気に陰りがさし、多くの家具メーカーが廃業を余儀なくされることに。しかしピーピーモブラーは部分的に機械導入を採用することで、高品質を保ちながらも時代にあった家具を作り続けててきました。

現在でもピーピーモブラーはハンス J.ウェグナーの作品を最も多く製造している家具ブランドとして、世界に知られています。

 

デンマークの家具ブランド⑦:FREDERICIA(フレデリシア)

出典:Pinterest 「トリニダードチェア」

フレデシアも多くの名作を家具を生み出してきたデンマークの名門ブランドです。北欧家具の全盛期だった1955年、弱冠30歳のアンドレアス・グラバーセンが、「フレデリシア・ストールファブリック」を買収したことから始まりました。

その後かねてから親交があった、まだ若きボーエ・モーエンセンをデザイナーとして起用し、わずかな期間でみるみる業績を伸ばします。そして1950~1970年代にかけて、モーエンセンの作品を次々と製品化していき、デンマーク有数のハイクオリティブランドへと成長していったのです。

その中でもモーエンセンによる「スパニッシュチェア」「イージーチェア2204」「シェーカーチェア」は、フレデリシアのアイコンとも言えます。

さらに1980年代後半からは、ナナ・ディッツェルが看板デザイナーとなり、時代感を反映したヒット作をいくつも発表。彼女の「トリニダードチェア」は、北欧家具デザインの伝統的な素晴らしさと、現代的なニーズに応える機能性を世界に強くアピールすることになりました。

そのように数多くの名作家具がありながらも、若手デザイナーを積極的に起用することでも有名です。最近では日本人デザイナーのシン・アズミが「NARAチェア」を発表し話題になりました。これは奈良の鹿を彷彿とさせるようなユニークなデザインのイスです。

北欧デザインの巨匠作品から新鋭の若手作品まで備える北欧ブランドとして今後も注目のブランド。

 

デンマークの家具ブランド⑧:J.L Moller(ジェイエルムラー)

出典:Pinterest

ジェイエルムラーは1944年、ニールス・O・モラーによって誕生しました。家具職人兼デザイナーであるモラーが作り出す家具は、北欧家具らしい上品なアーチを活かしたデザインと、優れた接合技術が融合した名作ばかり。中でも多くの製品にみられる、”先端に向かって細くなる脚”は特に美しいと評価され、その芸術的なデザインは「スカンジナビアン家具の美しい結晶」と賞賛されています。

製品のラインナップではダイニングチェアが多く占め、何世代にも渡って使える確かな作りが人気です。

そんなジェイエルムラーの一番の特徴は、”素材への徹底したこだわり”です。材料となる木材は厳しく選別された一級品だけ。そして木材の加工から家具の仕上げ、出荷直前のチェックまで、熟練の職人によって全て自社工場で行うという徹底ぶりです。デザイン性の高さとともに、こだわり抜いた品質管理によって、世界中のファンの心を魅了し続けてきました。

大量生産が可能になった現在でも「長年の鍛錬により研ぎ澄まされた感覚を持つ職人たちよりも、優れた機械は存在しない」として、商品の最終仕上げは必ず職人の手作業で行っているそうです。

 

デンマークの家具ブランド⑨:BoConcept(ボーコンセプト)

出典:Pinterest

ボーコンセプトは木製家具職人、イエンス・ジェンソンとタジェ・モルホルムが1952年に設立したデンマーク発祥のインテリアショップです。「Bo」とはデンマーク語で「生活」を意味します。その名のとおり、ボーコンセプトは、生活を取り巻くあらゆるインテリアを扱いながら「インテリアはどこまで暮らしを豊かにできるか」という挑戦を続けてきました。

現在では65ヶ国にわたって300店舗以上を展開する世界的なブランドです。日本にも19店舗の直営店があり、人気の高さがうかがえます。

創業当初から伝統に基づいた優れたデザインをかかげ、近年では多くの有名デザイナーとのコラボレーションを通してモダンで機能的な家具製作を行っています。

部屋のサイズやライフスタイルに合わせ、家具のカスタマイズができる「インテリアデザインサービス」もあり、現代生活にフィットしたインテリアブランドとして人気を博しています。

 

デンマークの家具ブランド⑩:Muuto(ムート)

出典:Pinterest

ピーター・ボーネンとクリスチャン・ビエによって2006年の設立されたムート。当初から新たな北欧デザインの躍進を担うブランドとして注目されてきました。ムートとはフィンランド語で「新しい視点」、「変革」などの意味を持ちます。

そのブランド名には、北欧デザインに新しい考えを取り入れ、再び国際的なデザインシーンで最先端に立たせたいという思いが込められているそうです。

ムートはその目標をかなえるために、世界で活躍する新鋭のスカンジナビアンデザイナーたちを積極的に起用しています。従来の北欧デザインをもとにしながらも、彼らのイマジネーションを自由に表現させ、新たな息吹を感じさせるインテリアや生活用品を数多く生み出してきました。

その洗練されたシンプルモダンな製品たちは機能性に満ち、それていて従来の伝統的北欧デザインが息づいています。生活を個性的かつスタイリッシュに彩ってくれる人気のブランドです。

 

最後に

デンマークの家具ブランドを紹介しました。どのブランドを見てもその根底にあるのは「伝統的なクラフトマンシップ」と「やむことのないデザインへの追求」です。家具を作るためにあらゆる努力をおしまず、伝統を大切にしながらも現代のニーズに応えようとするその姿勢が世界中のファンを魅了し続けるひみつなのかもしれません。いつかは手にしたいあこがれのデンマーク家具。家具は毎日触れる必需品だからこそ、作り手の心が伝わってくる美しいものを撰びたいですね。

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