アールヌーボー様式の美術館まとめ!海外はもちろん日本にも存在

by twistdesign

ヨーロッパで生まれたアールヌーボー様式は、多くの画家や建築家に影響を与えました。特に建築におけるアールヌーボー様式には見どころが多く、日本でも人気のスタイルです。今回はアールヌーボー様式の美術館にスポットを当ててご紹介していきます。

■アールヌーボーとは?美術館に取り入れるメリットはある?

まずはアールヌーボーについておさらいしていきましょう。

・アールヌーボーとは?

アールヌーボーはフランス語で「新しい芸術」を意味する言葉です。19世紀後半のイギリスでは産業革命による商業主義が基本理念でした。粗悪な大量生産型の家具が溢れ、職人による手仕事の美しさや、生活に寄り添う実用的なデザインは二の次とされたのです。

そんな状況を変えたのが、詩人兼デザイナーであるイギリス人ウィリアム・モリスが主導する「アーツ・アンド・クラフツ運動」でした。アーツ・アンド・クラフツ運動の目的は「芸術」、「工芸」、「生活」の一致。この芸術運動に多くの工芸家や建築家などの様々な分野の芸術家が加わり、生活の美化を推進した結果、新しい芸術である「アールヌーボー」が誕生しました。

・アールヌーボーを美術館に取り入れるメリットは?

アールヌーボーの特徴とされる様式は幅広く、花や植物などの有機物モチーフや、曲線を多く使うデザインや、ステンドグラス、アイアン加工など、多岐に渡ります。そのため、アールヌーボー様式で建てられた美術館は見どころが多く、単体としても魅力的です。

さらに展示との相性が良ければ、その空間全体が芸術作品の様相を呈します。美術館に非日常を味わいに行く人にとっては、歴史的価値のあるアールヌーボー様式の美術館は格好の場と言えるでしょう。また、建築におけるアールヌーボーの解釈は各国で異なるのが現状です。旅行の目的として美術館へ立ち寄る場合は、その国におけるアールヌーボーの捉え方も見どころのひとつに加えられます。

このように歴史的、芸術的価値の高いアールヌーボー様式を美術館に取り入れるのは多くのメリットが挙げられます。

■アールヌーボー様式の美術館3選【日本編】

アールヌーボー様式は日本の建築家にも多くの影響を与えました。今なお残る芸術的価値の高いアールヌーボー様式の美術館から、観光目的で楽しめる美術館まで3選をご紹介します。

・似鳥美術館(旧北海道拓殖銀行小樽支店)

出典:小樽芸術村公式サイト

竣工1923年の似鳥美術館はもともと旧北海道拓殖銀行小樽支店でした。竣工翌年に日本を代表する作家である小林多喜二が、この建物で銀行員として働いていたことでも有名です。4本の円柱が装飾的でエントランスを優雅に演出しています。

北海道の小樽芸術村には旧北海道拓殖銀行小樽支店の他にも「旧三井銀行小樽支店」や「旧荒田商会」などの建築物が現存し、当時の小樽の盛況ぶりが伺い知れます。また、似鳥美術館地下1階にはアールヌーヴォー・アールデコ グラスギャラリーが常設されていて、エミール・ガレ、ルネ・ラリックらアールヌーボーの代表的作家たちの作品が鑑賞可能です。

・三菱一号館美術館

出典:三菱一号館美術館公式HP

三菱一号館は、1894年にイギリス人建築家によって設計されました。全館に19世紀後半のイギリス様式が用いられています。建設当時は三菱合資会社の銀行部があり、他の物件も貸事務所として使われていました。老朽化のため初代の三菱一号館は解体されましたが、その後建築家の原設計を基に同じ場所に復元された貴重な建造物です。

この復元事業は解体時に保存されていた部材を再利用したり、建築技術を忠実に再現して作業が行われたり、実験的要素のある取り組みが当時注目されました。2009年に復元された日本の近代技術の結晶でありながら、赤レンガと白の窓枠のレトロな印象は当時のまま。過去と現在を結ぶ不思議な美術館として訪れる人を魅了しています。

・箱根ガラスの森美術館

出典:箱根ガラスの森美術館公式HP

箱根ガラスの森美術館は1996年にオープンした新しい建築物です。アーチを多用した造りに、アイアンでカーブを作った手すり、石で掘ったグリフィンなど細かな見どころが多く、子どもや女性にも人気のスポットになっています。レトロな雰囲気の館内はアンティークなヴェネチアン・グラスが展示され、厳かな雰囲気です。

一歩外に出れば広大な庭園内にも展示物が多く見られ、あじさい、バラ、紅葉など季節の花々とのコラボレーションが楽しめます。中でもクリスマスシーズンのクリスタルガラスで作られたクリスマスツリーは圧巻です。建築の装飾、館内の展示、庭園など様々な楽しみ方ができる美術館として観光客からも人気を博しています。

■アールヌーボー様式の美術館3選【海外編】

海外には有名なアールヌーボー様式の美術館があります。特にアールヌーボー隆盛期に建てられた建築物がそのままの形で使用されている美術館を3選ご紹介します。

・オルタ美術館

出典:mada_t_world

ベルギーの首都ブリュッセルにあるオルタ美術館はアールヌーボー最盛期の1898年から1901年の間にヴィクトール・オルタのアトリエ兼私邸として建設されました。アールヌーボー建築の父と呼ばれる建築家、ヴィクトール・オルタが、顧客に対する「ショールーム」の意味を持たせた建築物で、家具や照明、ドアノブにいたるまで自らがデザインを手掛けています。

アールヌーボー様式の特徴である、鉄骨構造、植物を連想させる有機的フォルムなど、生活に溶け込む美しいデザインが見どころです。また、暗くなりがちな建物の中央部に光が届くように計算された階段の配置など、実用面においても優れた設計になっています。

・ユーゲントシュティール博物館

ラトビアの首都、リガにあるユーゲントシュティール博物館です。ユーゲントシュティールはドイツ語で「新芸術様式」を意味します。言葉は違いますが、ユーゲントシュティール=アールヌーボーです。リガで起きた建築ブームが、ユーゲントシュティール最盛期と重なったことで、リガ中心部の建築物には多くのユーゲントシュティール様式が残っています。

博物館内部では建築家、ミハイル・エイゼンシュテインが住んでいた20世紀初頭の生活が再現されていて、家具や美術品、衣類、食器などの展示物は実際に当時使われていたものです。今では通路の一部としてシンプルに作られることが多い廊下や天井、階段などに繊細な装飾がほどこされ、部屋と部屋の移動の合間も優雅で華やかな世界感に浸れます。

ユーゲントシュティール博物館に限らず、リガ地区の建築物にはアールヌーボーをより力強く表現した奇抜な装飾が多いのが特徴です。

・ブダペスト応用美術館

出典:som0328

ハンガリーにあるブダペスト応用美術館はレヒネル・エデンの代表作で、世界で3番目に古い応用美術館として有名です。観光地としても人気が高く、テレビドラマのロケ地に選ばれたこともあります。屋根のエメラルドグリーンは、ハンガリーのジョナイル磁器で装飾され、生活に美を取り入れるアールヌーボー様式を体現しているようです。

美しく装飾されたエントランスを抜けると広大なガラスのホールが広がります。また、内部のデザインにイスラム教やヒンドゥー教のモチーフが用いられ、ドームのような外観と相まって、全体的にエキゾチックな雰囲気です。展示には家具や繊維、グラスなど優れたヨーロッパの芸術作品があり、アールヌーボー様式に囲まれながら、ヨーロッパの文化に触れることができます。

■アールヌーボー様式の美術館でショートトリップを楽しむ

アールヌーボー様式の美術館をご紹介しました。ヨーロッパの芸術活動から生まれた様式美であるアールヌーボー建築は、今なお美術館として人々に愛されています。美しいアールヌーボー様式の美術館で芸術を全身で感じてみませんか?

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