「北欧の家具ブランド」というと、圧倒的に多いのがデンマーク発祥のものです。でもスウェーデンにもたくさんの家具ブランドがあるんです。今回は意外と知られていない、すてきなスウェーデンの家具ブランドを紹介します。
スウェーデンの家具ブランド①:IKEA
出典:IKEA
日本で一番有名なスウェーデンの家具ブランドと言えばイケアですね。「低価格のおしゃれな北欧デザイン」を武器に、日本のおける北欧ブームの立役者ともなりました。家具だけではなく、インテリア雑貨やエクステリアまで種類豊富に取り揃えています。
1943年に創立したイケアは、スウェーデン発祥の世界最大の家具量販店です。世界各国に出店し、現在では世界的に名の知られた有名家具ブランドになりました。
イケアをここまでのブランドに成長させたのは、独自の経営戦略の結果だといえるでしょう。世界に向けての大量生産と、すべての家具を「組立て式」にすることで低価格を実現。さらに店内の構造にも工夫をこらしました。
店内を「イケア商品を使ったテーマ別モデルルームのエリア」、「収納・テーブル・小物などの商品エリア」、「組み立て家具の倉庫エリア」、「レストラン・ビストロエリア」、「託児施設」の5エリアに分けたのです。
イケアの商品を展示した、多様なモデルルームを見ながら商品を検討できるという、アミューズメントパークのような楽しさがイケア最大の魅力です。
またターゲットの若いファミリーに来てもらうため、託児施設を設けるというアイディアも成功しました。スウェーデンの森をイメージしたプレイルームは大人気で、週末になると3~4時間待ちになることもあるそうです。さらにレストランでは本場スウェーデンの味を低価格で楽しめ、利用すれば離乳食を無料でもらうこともできます。
家具を買わなくても家族で楽しめる、家具店の概念を覆した総合インテリアショップです。
スウェーデンの家具ブランド②:DESIGN HOUSE STOCKHOLM
デザインハウス・ストックホルム社はアンダース・ファルディグによって、1992年にスウェーデンのストックホルムに設立されました。60名以上の北欧を代表するデザイナーや建築家たちとネットワークを結び、北欧デザインの観点からデザイン性・実用性を兼ねそろえた製品を創りだしています。
その製品は家具だけにとどまらず、食器・照明・インテリア雑貨・ウェアなど生活を取り巻く多くのものを扱っており、北欧デザインブームやデザインショップの先駆けともなりました。現在では北欧を代表する家具ブランドです。
MOMA(ニューヨーク近代美術館)に永久展示されている照明「ブロックランプ」は、電球がガラスブロックの中に閉じ込められているようなユニークなデザインで、日本でも大きな話題になりました。
スウェーデンの家具ブランド③:string®
ストリングは1949年にスウェーデンで誕生したモジュール式シェルフブランドです。建築家のニルス・ストリングとデザイナーのカイサ・ストリング夫妻が考案したフレキシブルなシェルフは、北欧インテリアが好きな人なら一度は見たことがあるのではないでしょうか?
「モジュール式家具」とは規格化されたパーツで構成する、組み立て家具のことです。ストリングの家具は、梯子状のサイドパネルが棚板を支える、とてもシンプルな構造になっています。主に4つのサイズがベースとしてあり、それらとサイドパネルの組み合わせによって、さまざまな形のシェルフをつくることができるようになっています。
このシンプルな構造、拡張性、そして機能美こそがストリングの魅力です。
日本人から見ると、とてもスタイリッシュな今時の家具という印象ですが、スウェーデン人にとってストリングの家具は、おばあちゃん世代から生活に深く根付いている、とても身近な家具なんだそうです。そんなすごいところがさすがスウェーデンの家具ですね。
スウェーデンの家具ブランド④:innovator
出典:THE HOME
1969年に創立したイノベーターは、スウェーデン発のおしゃれブランドとして知られています。「innovator=革新者」という名前のとおり、革新的でミニマムなデザインが特徴です。
イノベーターが一躍脚光を浴びたのは、コペンハーゲンの家具フェアに「スタンツ・チェア」を出品した時です。このイスは「リビングに置けば気分転換できて、気が向けば外に運び出して青く澄み切った空をながめられるイス」が欲しいという想いから生み出されました。
イスをただの家具としてではなく、「生活を共に楽しむ道具」とした背景には、北欧ならではの気候、風土、人々の気質があります。日照時間が短く、一年の半分が冬という環境で育ったスウェーデンの人々にとって、“限られた時間をいかに有効に使って楽しむか”ということは重要なテーマなのです。
現在では家具だけではなく、スーツケース、バッグ、時計などさまざまな商品も手掛け、「つねに自分らしいライフスタイル」を創造し続けています。
スウェーデンの家具ブランド⑤:ASPLUND
出典:ASPLUND
スウェーデンで30年続くアスプルンドは、余計なものをそぎ落とした、シンプルでモダンな家具がそろう家具ブランドです。そのスタートはマイケルとトーマスのアスプルンド兄弟によって開かれたギャラリーでした。2人は家具を美術品ととらえ、それを展示する場を作りたかったのです。
そうして作られたアスプルンド・ギャラリーでは、初期の頃ジョナス・ボーリン、ジョン・カンデル、トーマス・サンデルなどの作品を展示し、すぐにスウェーデンデザイン界で話題を呼びました。
その後、アスプルンド兄弟はEDITION ASPLUNDという名前で独自の家具やデザイン作品を発表し始めます。1994年に発表されたトーマス・サンデルとジョナス・ボーリンデザインの家具「SNOW」シリーズはアスプルンドのアイコン的家具です。
現在では、スウェーデンだけではなく、国際的に活躍しているデザイナーたちとタッグを組み、最先端の北欧デザインを生み出すブランドとして世界的に認められています。
また、多くの家具ブランドが製造の拠点を海外においている中で、アスプルンドは「made in Sweden」にこだわり、スウェーデン国内での製造を続けています。
スウェーデンの家具ブランド⑥:SWEDESE
出典:SWEDESE
スウェデッセは2人の兄弟、イングヴとジャーカーによって1945年にスウェーデンで誕生しました。設立から70年以上たった老舗家具ブランドです。
そのデザイン性の高い、モダン北欧スタイルの家具は世界から高い評価を受けています。カラーバリエーションがとても豊富なので、スウェデッセの家具だけで部屋を同系色でまとめたり、または様々な色でカラフルにしたりすることもできてしまいます。
創業者の一人、イングヴ・エクストロームはスウェーデンのモダニズムに大きな影響を与えた一人です。デザイナーだけでなく、建築家やイラストレーターなど多くの肩書を持つ多才な人物でした。スウェデッセでは「デジレチェア」や「シッボチェア」など多くのデザインを残しています。
特に1956年に発表された「ラミノチェア」はイングヴの代表作であるとともに、スウェデッセのアイコン的存在です。1999年にはスウェーデンのインテリアデザイン雑誌「Sköna Hem」によって“20世紀最高のスウェーデン家具デザイン”にも選ばれました。
スウェーデンの家具ブランド⑦:GARSNAS
ヤシネスは数ある北欧ブランドの中でも屈指の老舗家具ブランドです。1893年にスウェーデンの南部で小さな家具製作ワークショップとしてスタートしました。伝統的な職人の技法に洗練された最先端技術を取り入れた、ナチュラルモダンスタイルが特徴です。
現在では北欧インテリアデザイナーの巨匠の一人となった、オーケ・アクセルソンがメインオーナーとなり、自社の製品をプロデュースしています。
ヤシネスの代表作の一つは独特なモコモコ感が特徴のファブリックソファです。北欧らしいカラフルなファブリックで作られ、背もたれやひじ掛けなどに立体的な凹凸デザインがほどこされています。伝統的な北欧デザインに遊び心が見え隠れする魅力的なシリーズです。
これまで多くのデザイナー達と優れた家具を発表し、ホテルや公共施設にも導入されています。日本でも国立近代美術館等で使われているので、知らないうちに見知っている方もいるかもしれません。
スウェーデンの家具ブランド⑧:David design
出典:David design
1988年にスウェーデン南部の街、マルメで誕生したデイビッド・デザインは、シンプルかつ機能的なライフスタイルを提案するインテリアショップです。創設者のデイビッド・カールソンは元ポップ歌手という少し異例な経歴の持ち主。
オリジナル商品を中心に雑貨やファブリックなどのインテリアアイテムの他、ファッションまで幅広く展開しています。これまでに北欧の有名なデザイナーや建築家とコラボし、さまざまな製品を発表してきました。
現在ではストックホルムと東京でも旗揚げし、その斬新なデザインに人気が高まっています。
スウェーデンの家具ブランド⑨:KÄLLEMO
シャレモは北欧、ヨーロッパ、アジアに拠点をおくスウェーデン発の家具ブランドです。その家具はとてもアーティスティックでセンセーショナル。
始まりは1981年にヨナス・ボリーンが卒業制作のために製作した、コンクリートと未処理のスチールでできたイス「CONCRETE」でした。それは機能性が重要視されていた当時のスカンジナビアデザイン界に強い衝撃をあたえることになったのです。
その後もヨン・カルデルの3本脚のイス「CAMILLA」やシェルフ「PILASTER」など、独創性に富んだ作品を発表し、「その佇まいは家具というよりオブジェのようだ」と評されています。
現在でも新しい発想を持った家具を生み出し続け、その斬新でユニークなデザインは多くのファンに愛されています。
スウェーデンの家具ブランド⑩:Svenskt Tenn
出典:Svenskt Tenn
スヴェンスク・テンは、ストックホルムのエステルマルムエリアにある老舗のインテリアデザインショップです。ブランド名の「スヴェンスク・テン」はスウェーデン語で「錫(すず)」という意味で、もともとは錫アーティストのニルス・フォーグステッドとエストリッドの工房から始まりました。
現在ではテキスタイルが有名で、日本でもエストリッドがデザインした「エレファント」の柄が大人気です。シンプルなゾウのイラストが並んだデザインはいかにも北欧らしく、幅広い年代に愛されています。
1930年代から家具などのインテリア全般を手掛けるようになり、北欧らしい色彩に富んだテキスタイルを使ったソファーなどが人気です。
スヴェンスク・テンは他のインテリアショップと少し違い、財団によって運営されています。その目標はなんと「スヴェンスク・テンが永遠にこの世に存在すること」で、その利益はすべて研究や文化に使用されています。
最後に
日本でも有名な大手の家具ブランドから隠れた名ブランドまで、幅広くスウェーデンの家具ブランドを紹介しました。どのブランドの製品も北欧らしい機能性とデザイン性が伝統の技によって体現され、その歴史の深さを感じます。
スウェーデンの家具は北欧の中でも特にカラフルな色彩とナチュラルなテイストを融合させたものが多いのが特徴です。一言で「北欧の家具」と片付けてしまうのではなく、それぞれの国に思いを馳せながら見てみると、より北欧の家具を楽しむことができますよ。