社会はどうあるべきか?を考えるソーシャルデザイン

by twistdesign

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●いま注目を集めるソーシャルデザインとは?

ソーシャルデザインの定義とは?

近年注目され始めたソーシャルデザインという言葉があります。直訳すると、社会に関するデザイン。つまり、特定の人や組織のための営利を目的としたデザインではなく、社会をよりよくするための公益性の高いデザインというのがソーシャルデザインの意味です。

デザインの定義はいくつかありますが、ソーシャルデザインとは、ただ目の前の“モノ”を創り出すにとどまらず、社会のかかえるさまざまの問題を解決するために、新しい“コト”を創造し、それにともなって体系化する社会のシステムを整えることまでを含んでいます。では、新しい“コト”とは何なのでしょうか? それは、商品、アイデア、プロセス、情報、コミュニケーション、サービス、ビジネスや体験など、実に幅広く、多様に進化していっています。それら新しい“コト”を生み出すことは、社会のあり方を問うことともいえるでしょう。ソーシャルデザインは、「みんなのために、新しいモノやコトをデザインし、社会のしくみやあり方を整えること」と表現できるかもしれません。

ソーシャルデザインを考えるときに、合わせてよく用いられるのが、サステイナブル(持続可能)な社会という表現です。これは、将来にわたって持続可能な開発が行われる社会ということ。言い換えると、私たちの世代(現在)と私たちの子どもや孫の世代(将来)、どちらも満足できる社会。ソーシャルデザインの目指すところは、そうしたサステイナブルで調和のとれた社会の実現です。

これまで、社会問題を解決しようとしたとき、多くは問題を排除するようなアプローチで対策がとられてきました。私たちがいなくなる100年、200年先のこと、地球の未来のことを俯瞰して、それらに配慮した解決策を見出すということが一般的ではなかったからです。しかし、平成に入り、世の中の意識が少しずつ変化し、個人の意思による社会貢献活動が広がりをみせはじめました。問題を排除するだけではなく、もっとポジティブなイメージで社会のしくみから考え直し、いまと未来をよりよくする新しい解決策を探ろうという風潮が強まっていたのです。

私たちは日常的にさまざまな社会的な課題に直面しています。子どもや子育て家庭を取りまく課題、働き方改革、災害復興支援、障害者雇用、ジェンダー格差の拡大、少子高齢化と医療問題…。自分にとって身近なケースだけでも、たくさん思いつきますね。いっぽうで、紛争や環境保全、エネルギー問題など、複雑化するグローバルな課題も山積しています。

高度情報化や国際化により、世界との距離は縮まり、さまざまな属性や背景を持った多様な人とのかかわりが増えてきている現代。こうした社会課題との接点も増え、自分の身のまわり、自分の住む地域や国の問題だけにとどまらず、世界、ひいては地球規模の課題に対してみんなが当事者意識を持ちはじめてきています。私たち市民が、一丸となってそうした課題を解決しようとする試みそのものが、ソーシャルデザインの原動力となっているのです。

ソーシャルデザインの始まり

日本でソーシャルデザインの活動が広まりはじめたのは、90年代の後半、平成に入ってからのことです。このころ、世の中の風潮として急速に社会参加意識が高まりました。それは、環境問題が人々の共通課題になったことと、市民によるボランティア活動が浸透したことの2つが大きな要因と考えられています。

かつて環境問題とは、近代化にともなう大気汚染、水質汚濁や自然破壊など、公害と呼ばれる問題を指しました。公害は大きな社会問題として国会を揺るがし、公害対策基本法などの環境法の整備、環境庁(現・環境省)の発足など、国家的な対策が講じられてきました。それによって公害対策が民間企業にも広がり、省エネルギーへの取り組みが進みましたが、今度は都市生活での大気汚染などが増加していきます。車社会による排ガス問題や、冷蔵庫、クーラーなどの冷媒で使用されていたフロンガスが原因のオゾン層破壊など、私たち個人の生活や行動が環境を損なっているという現実を、個人が実感し始めるという状況に変化していったのです。いまや、温室効果ガスが原因の地球温暖化や商業伐採を繰り返したことによる森林減少、それにともなう生物多様性の減少など、環境問題は世界共通の課題です。国際社会において「サステイナブルな開発」という考え方が共有され、地球規模で環境問題へ取り組もうという意識が高まってきています。

また、90年代は、ボランティア活動への関心が高まったことでも知られています。そのきっかけとなったのが、1995年、死傷者約5万人を出した阪神・淡路大震災。およそ140万人が活動したと推計され、その多くが若者でした。個人が自発的に社会貢献活動をすることが全国的に広がり、いまでは災害が起こるたび、若者からシニアまで多くのボランティアが被災地で活動するようになりました。

こうした出来事を背景に、「問題は他人ごとではない」「自ら進んで解決すべき課題である」という意識が私たちのなかに芽生えだし、ソーシャルデザインという価値観が少しずつ共有されるようになっていったのです。

2000年代には、社会貢献を行うプロジェクトが次々と登場し、デザイナーやクリエイターをはじめ、多くの学生団体や市民団体が立ち上がりました。2011年に起きた東日本大震災では、被災地支援のためのWEBサイトやクラウドファンディングがスタートするなど、ソーシャルデザインの動きはより広がりを見せています。情報やコミュニティがどうあるべきか、どんな街で、どう暮らしていくのか、一人ひとりが考え、自発的に行動することが当たり前となってきたいま、ソーシャルデザインという考え方は、より身近なものになってきています。

●国内外における事例

日本のソーシャルデザイン事例

<むろと廃校水族館>

出典:http://higashi-kochi.jp/sightseeing/post-133.html

高知県室戸市に2018年4月にオープンした、むろと廃校水族館。旧椎名小学校を改修し、地域の人や観光客に親しまれる水族館として生まれ変わりました。プールや校舎内に設置した水槽にウミガメがゆったりと泳ぐなど、「廃校」であることをウリとしたユニークな展示が人気。懐かしい雰囲気の机や椅子もそのままで、人びとが足を運びやすい、交流の拠点となる施設となりました。

<シブヤフォント>

出典:http://www.shibuyafont.jp/index.html

2019年度グッドデザイン賞を受賞。渋谷区内の障害のある人が描いた文字や絵をもとに、専門学校桑沢デザイン研究所の学生がフォントを制作。「シブヤフォント」として公式サイトで公開され、フォントやイラストは渋谷区新庁舎や同区職員の名刺にも使用されています。また、2019年11月1日に開業した「渋谷スクランブルスクエア」の展望施設「渋谷スカイ」のショップでは、シブヤフォントを採用したユニークなお土産を販売。商品の売上の一部を障害者支援施設に還元しています。「渋谷ブランド」を確立し、社会へその情報を発信しながら、ダイバーシティ、インクルージョンの理念を広げるプロジェクトです。

<D&DEPARTMENT PROJECT>

出典:https://www.d-department.com/ext/about.html

2000年にデザイナーのナガオカケンメイによって創設された、地域のロングライフデザインを発掘し、その土地のよさを伝えるストアスタイルの活動体です。「自分がデザインするのではなく、すでに世の中にあるものをデザインの視点で再評価する」という観点で日本国内外から生活用品をセレクト。地域コミュニティと連動しながら、展覧会やワークショップを開催するなど、ソーシャルデザインの価値観を持ちながら、持続可能で健やかなビジネスモデルを展開しています。

海外のソーシャルデザイン事例

<IKEA ThisAbles>

出典:https://thisables.com/en/

「ThisAbles」は、イスラエルのIKEAと、障害を持つ人々に技術提供する非営利団体Milbat、Access Israelが協同で立ち上げたプロジェクト。障害を持つ人々のために、3Dプリント用の家具のアタッチメントを設計し、その情報を無料でダウンロードできるようにしました。製品はPLAで3Dプリントできるシンプルな構造で、取り付け方はYoutubeにアップされています。既存の家具をアクセシブルに変える補助部品でハンディキャップを持つ人のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を向上させようというソーシャルデザインです。「より快適な毎日をより多くの方々に」をビジョンとする世界的家具メーカーとしてのCSR(企業の社会的責任)への取り組みともいえます。

<「Ⅰ♥NY」ロゴ>

出典:ニューヨーク州観光局

日本でもお馴染みの「アイラブニューヨーク」のロゴは、荒廃したニューヨークを再興させ観光客を呼び戻すキャンペーンの一環としてデザインされました。制作を依頼されたニューヨーク出身のミルトン・グレイザーは、無償でデザインを引き受けたそうです。このイベントは大成功し、ロゴがプリントされたグッズは土産の定番に。かつて財政破綻の危機に直面していた街は、アートの街ニューヨークとして成長を遂げたのです。

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