●オフィスデザインとは?
働き方変革が進み、勤務形態やオフィスの在り方が多様化してきているいま、コンセプトに基づいた内装や家具、レイアウトにこだわったオフィスデザインへの注目が高まってきています。オフィスデザインは直接収益に結び付くものではないので、イニシャルコストだけを見ると重要視するべき対象外だと考える人も少なくありません。しかし、オフィスデザインに必要となる自社のコンセプトを明確化させることは、組織やビジネスのあり方を見直すきっかけにもなるため、結果として、会社としての新しい価値の創出につながります。オフィスデザインは、組織に革新をもたらし企業価値を高める戦略的なツールなのです。
では、オフィスデザインとは具体的に何をし、会社にどのような利益をもたらすのでしょうか? オフィスデザインをするにあたって、まず必要となるのは、コンセプトの設定です。会社が何を目指し、どうありたいのか。そのために、オフィスをどのような印象のデザインで統一し、そこからどんなメッセージを発信するのか。こうした課題に向き合い、答えを明確にすることで、オフィスづくりの軸となるデザインコンセプトが固まります。場合によってはコーポレートカラーを決めることで、会社のイメージを明確にできることもあるでしょう。そして、設定したコンセプトに従って最適なオフィスのレイアウトを考えます。あとは、オフィス家具、内装、照明などを選定し、導線計画やコミュニケーション設計などを詰めることで、働きやすい環境を整えていくのです。
●オフィスデザインの効果
コミュニケーションの活性化
オフィスデザインによって得られる効果の1つは、コミュニケーションの活性化です。レイアウトを工夫し、会議室やリフレッシュスペースなど、目的に応じた空間をしつらえることで、メンバー間のコミュニケーションや情報共有が活発に行われます。それは新しいアイデアの創出を促し、会社がかかえている問題や、プロジェクトが直面している問題をスムーズに解決することへとつながるでしょう。一体感を持って仕事に取り組むことで会社のコンセプトが社員の間で共有され、会社に対する信頼度やモチベーション向上へとつながっていきます。
仕事の生産性向上
また、個人やチーム全体の生産性が向上する点もポイントです。1日の生活のなかで、オフィスで過ごす時間はおよそ三分の一。自分の能力を最大限に発揮できる快適なオフィス環境を作ることは、社員のモチベーションを高めることにつながります。個人作業に集中できる囲われた空間や、クリエイティブなアイデアを生み出す開放的なディスカッションスペースなど、場面に応じた空間設計を行うことで、業務効率や生産性の改善が期待できます。デザイン性に富んだオフィスに日常的に身をおくことで、美的センスやバランス感覚、自由な発想力が養われ、自社の競争力の強化につながっていくはずです。
会社のブランディング
オフィスデザインは社外に対して自社ブランドをアピールするツールとしても機能します。オフィスは社員だけのものではなく、社外に対してもメッセージを発信する場。企業理念や経営方針、自社で提供できるサービスなどを表現し、会社の特色やイメージを確立することにも役立つはずです。
優秀な人材の確保
優秀な人材の確保や、経験を積んだスタッフの離職を予防するという側面も。リラックスルームやカフェスペースなどの福利厚生は、社員のモチベーションを高めるよい事例です。効率性だけを求めたオフィスではなく、居心地のよさや気分転換のしやすさにも配慮されたデザインのオフィスは、社員の満足度が高まります。仕事に大きな違いがないのであれば、人はよりよい就労環境を選ぶもの。快適でおしゃれなオフィスは人材確保にも貢献するのです。これは、企業にとって大きなメリットと言えます。
●重要となるコンセプト
オフィスをデザインするときの軸となるコンセプト。これは、オフィス機能を構築するための基盤となるだけでなく、組織としてのあり方を見直す拠り所にもなる重要な観点です。コンセプトは企業の理念や想いであり、オフィスデザインとはコンセプトをオフィスに落とし込むこと。つまり、オフィスデザインを成功させることは、企業の理念や想いが可視化された空間をつくるということになります。コンセプトが可視化された空間で働くことで、従業員は常に組織の目指す方向を意識することができますし、そこを訪れる人にもポジティブな印象を与えることができます。
また、コンセプトを明確にしておくことで、デザインや施工を行う業者との意思疎通もスムーズに行えるでしょう。より個性が感じられる、新鮮でほかにはない魅力的なオフィス作りの足掛かりとなるのが、コンセプトなのです。
そんなコンセプトの決め方は、企業の業種や規模、サービス内容によってさまざまですが、まずは現状で感じている課題に向き合うことが必要となります。「会議スペースが足りない」「移転を機にデスクを増やしレイアウトを変えたい」といった機能面の問題や、「自社ブランドをもっと若者にPRしたい」といったブランディングの課題。「部署間のコミュニケーション不足を改善したい」「社員の満足度を高めたい」といった組織としてのあり方や従業員の働き方に焦点を絞る事例も。「エントランスがおしゃれな事務所にしたい」「ヴィンテージ家具をおきたい」といった見た目の要望ももちろんあるでしょう。オフィスに求める役割は、それぞれ企業によって全く異なるので、現状と将来的な展望とを推しはかりながら検討していきましょう。すべての希望を反映しようとするとどれも中途半端になって統一感が失われてしまうので、優先順位をつけ、数を絞りながら、最終的なコンセプトをまとめていきます。
●オフィスデザイン レイアウト事例
働き方ニーズに合わせたレイアウトを採用することで、業務効率は飛躍的に向上します。物理的にどこに移動して何をするのか、動線計画を立てたうえで空間の使い方を検討し、オフィスデザインをしていきましょう。また、人が集まって共同作業をする場では、視線をデザインすることも重要です。心地よい緊張感をもって業務に取り組めるようレイアウトを工夫することで、コミュニケーションをコントロールすることが可能です。
レイアウトを決めるときは、まずその目的を明確にします。プライバシー保護による集中力向上を第一に考えたいのか、コミュニケーション構築によるチーム力の強化を図りたいのか、抜本的な業務改革を行いたいのか、スペース効率を上げたいのか、目的によって最適なレイアウト型が決まってくるはずです。以下に、オフィスレのレイアウトパターン事例をご紹介します。
〈ブーメランデスク リンク式レイアウト/ジャパンマテックス〉
出典:オフィスレイアウト工房
ブーメラン型の角度のついたデスクをつなぎ合わせ、アメーバ状に発展させた動きのあるレイアウト事例です。目線が合いにくいため集中して作業ができるうえ、隣り合うメンバーが多いことによりコミュニケーションも活発になります。スペース効率が悪いのがデメリットですが、どんなワークスタイルにも対応しやすく、斬新な空間になる点が魅力です。
〈フリーアドレス レイアウト/ 株式会社MACオフィス〉
出典:オフィスレイアウト工房
個人専用の席をおかない、フリーアドレスシステムを導入したレイアウト。外出や会議が多く、自席にいることの少ない職種向きです。スペースソリューション、環境美化などの機能的な利点のほか、コミュニケーションパフォーマンスの向上や、スピーディーなチーム編成の実現など、組織の問題解決にも貢献します。
●エントランス&受付事例
企業のコンセプトや目指す社会的立場を一瞬で伝えることのできる場所、それがオフィスのエントランスや受付です。エントランスの印象は会社の第一印象そのもの。オフィスデザインの際、エントランスに気を使うことで、自社のイメージを格段にアップさせることも可能です。会社のロゴやコーポレートカラーをアクセント的に使用する、シンボリックなオブジェで個性的な雰囲気を演出する、壁材や照明にこだわるなどデザインを工夫すれば、事務所の入り口は付加価値のある空間に。お客様に対する自社ブランディングという役割のほかにも、従業員の帰属意識や愛社精神、モチベーションを高める効果も期待できます。
〈ディスプレイ/株式会社ヴァーナル〉
出典:オフィスレイアウト工房
コーポレートカラーのオレンジをメインとしながらパステル調カラーを散りばめた、明るく元気が出るエントランススペースです。壁全面にはカラフルな造作棚を配置し、自社商品をディスプレイ。それぞれの商品に合わせて背面の色を決めるなど、商品への想いを表現する空間に。スキンケア商品を展開する企業らしい、清潔感溢れるエントランスです。
〈ユニーク/株式会社ルーフスタイルグループジャパン〉
出典:オフィスレイアウト工房
自社商品のルーフィングを主役にしたエントランス。まず目に飛び込むRを描いた壁には、社名とともに一面赤茶の瓦。自社商品をゲストにしっかりと印象付けます。間仕切りにはガラスを取り入れ、抜け感を感じさせるオープンなスペースに。木目の床がゲストをあたたかな雰囲気で迎えながらも、窓枠や家具の黒が空間をシャープに引き締めます。あたたかみとおしゃれさを感じさせる、ユニークなエントランス事例です。