インテリアデザインの他に、最近では空間デザインと言う言葉を耳にする機会が増えました。しかし、似たような2つの言葉は、どう違うのかいまいちわからないこともあるでしょう。そこで今回は、インテリアデザインと空間デザインに注目しました。業務内容や年収、必要な資格などの観点から2つの違いを掘り下げていきます。
■インテリアデザインと空間デザインの違いとは?
インテリアデザイン、空間デザインとはそれぞれ何を意味するのでしょうか?まずは、それぞれの特徴を紹介します。
・インテリアデザインとは?
インテリアデザインとは、その名の通り、インテリアをデザインすることです。「インテリア」でイメージする住空間の家具やカーテン、壁紙や照明などをクライアントのニーズに合わせてコーディネートすることをインテリアデザインと呼びます。
扱う家具やファブリックは、既製品が多いのも特徴です。
・空間デザインとは?
空間デザインは、室内室外問わず空間全体をデザインすることです。
住空間だけでなく、商空間のイベントや店舗のコンセプトに合わせて、照明やディスプレイ、音響や空調などの演出全体を手掛けることを空間デザインと呼びます。
芸術性や独創性を求められ、装飾品や家具などを自分で創る場面も多いのが特徴です。
■インテリアデザイナーと空間デザイナーになるための資格の違い
同じデザインの仕事だからこそ、インテリアデザイナーと空間デザイナーの資格に違いがあるのか気になりますよね。それぞれの従事する仕事内容と照らし合わせながら見ていきましょう。
・インテリアデザイナーの資格
インテリアデザイナーとして活躍するために必須の資格はありません。企画力、コミュニケーション能力、家具や雑貨の知識などインテリアをデザインするために必要なスキルがあれば、無資格でもインテリアデザイナーとして活躍することが可能です。
しかし実際には、実績もない上に無資格のインテリアデザイナーが仕事を得ることは簡単ではないでしょう。潤沢に仕事を得るためにスキルの証明書となる資格をいくつか習得する必要があります。
- 1.インテリアデザイナー
インテリアデザイナーは、日本デザインプランナー協会主催の民間資格です。インテリアデザイナーに必要な家具や照明の販売技術の他に、デザインにおける表現力や理解度が試されます。2か月ごとに試験が開催され、在宅で受験が可能。
日程や受験方法などを見ると気軽な印象を受けますが、合格率は30%前後で、決して簡単とは言えない資格です。
- 2.建築士
建築士は、国土交通省が主管の国家資格です。内装をデザインするだけでなく、建築設計まで手掛けるインテリアデザイナーを目指す場合は必須の資格となります。建築士の資格は「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」の3種類があり、鉄骨や鉄筋コンクリートの建物を扱うためには二級建築士以上の資格が求められます。
二級建築士には受験資格(学歴・実務経験)が設けられており、試験は学科試験と設計製図試験の2段階選抜方式。
受験資格なども含めて難易度の高い資格といえそうです。
- 3.インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、インテリア産業協会主催の民間資格です。インテリア商品や販売などの知識が試される1次試験と、論文とプレゼンテーションの2次試験の2段階選抜方式となります。
2次試験には長文作成や製図などが出題され、最終合格率は20%の難関試験です。
- 4.インテリアプランナー
インテリアプランナーは、建築技術教育普及センター管轄の民間資格です。かつては建築士と同様に国土交通省管轄の国家試験だったこともあり、試験制度や試験内容は建築士資格と通ずるものがあります。
出題範囲も二級建築士と似通っており、取得すれば内装設計やリフォームなどに有効です。
インテリアコーディネーター資格の上級として認知されている資格です。
・空間デザイナーの資格
空間デザイナーは、インテリアデザイナー同様に必要な資格はありません。そのため、空間デザイナーは無資格でもスキルさえあれば活躍の場があります。ただし、資格が不要だからといって簡単にできる仕事かというとそうではありません。
実際にはイベントの空間デザインには芸術的、独創的なアイデアが必要で、商空間のデザインにはマーケティングの知識が必要です。空間デザイナーとして多くの仕事を受けるためには、多方面の幅広い知識が求められます。
一方で、実績を提示しにくい仕事のため、クライアントや就職、転職先へのスキル提示のためには資格取得が有効です。
- 1.空間ディスプレイデザイナー
空間ディスプレイデザイナーは、日本デザインプランナー協会主催の民間資格です。色彩、照明、配置、演出など空間デザインに関する問題が出され、在宅で受験できます。
年に5回実施されていて受験資格を設けていないため、興味がある人なら誰でもエントリー可能です。
■業務内容・年収・向いている人を比べてみよう
インテリアデザイナーと空間デザイナーを目指す場合、年収や性格の向き不向きも気になるポイントでしょう。最後に、インテリアデザイナー、空間デザイナーそれぞれの業務内容や年収、適正などをご紹介します。
・【業務内容】インテリアデザインと空間デザインの違い
インテリアデザインは、居住空間のデザインが主な仕事です。マンションのモデルルームや一般家庭の内装などを手掛け、壁紙やカーテン、ラグなどのデザイン提案を行います。
「人が住む」ことが前提であり、提案するデザインには実用性の高さが求められます。クライアントの好みという縛りもあるため、ある程度限られた選択肢の中でのデザインがメインです。
一方、空間デザインは室内環境のコーディネートにとどまらず、イベントブース、美術館、カフェやスーパー全体のトータルコーディネートなど仕事内容は多岐にわたります。
商品ディスプレイをしたり、イベントのテーマに沿った空間デザインをしたりと、様々な観点からデザインを提案するのが仕事です。
空間の規模、イベントのテーマやお店のコンセプトに合わせた配置、照明など空間全体をプロデュースします。
・【年収】インテリアデザインと空間デザインの違い
インテリアデザイナーと空間デザイナー、どちらも年収は勤務形態やスキル、実績によって幅があります。ハウスメーカーやイベント会社、建築会社に勤務している一般のデザイナーの場合は、年収およそ400万円前後で、普通のサラリーマンとほぼ変わりません。
実績を重ねて、依頼件数が増加すればそれに比例して収入も高くなるでしょう。また、インテリアデザイナーも空間デザイナーもデザイン賞を受賞したり、メディアに取り上げられたりした場合、一気にその後の収入が高くなる傾向にあります。
・【向いている人】インテリアデザインと空間デザインの違い
インテリアデザインは、居住空間をより良いものにすることが仕事です。デザインだけでなく実用性なども考慮に入れなければいけません。また、クライアントはホテルやハウスメーカーなどのプロからリフォームを検討するアマチュアまで幅広いため、インテリアに関する様々な知識が求められます。
向いている人は、家具や照明、インテリア雑貨などの現実的な商品知識が豊富な人。また、多様なクライアントからニーズをくみ取れる、コミュニケーション能力が高い人です。
空間デザインでは、住空間の他に商空間の依頼もあります。その場合、クライアントのコンセプトに沿った結果重視の提案力が求められます。商空間デザインには、売上アップ、お客様のリピート率アップなどマーケティングの視点が必要です。
向いているのは、独創的で柔軟な発想と戦略的な視野を持つ人。
また、イベントなどでのトラブルにも動じない対応力の高い人です。
■インテリアデザインと空間デザインは兼業できる
インテリアデザインと空間デザインには似通った性質もあり、どちらも資格必須ではないことから、明確な境界線はありません。インテリアと空間の両方のデザインを手掛けるデザイナーも少なくありません。
より幅広い知識とスキル、実績を持ったデザイナーが求められています。