日本でのオリンピック開催に向けて、注目されているのがユニバーサルデザイン。どんな建物にも入口があり、その多くにはドアがついています。今後造られるドアは誰もが楽に開閉できる、ユニバーサルデザインであることが重要です。今回はドアに着目し、ユニバーサルデザインについてご紹介していきます。
ユニバーサルデザインをドアに取り入れるメリットとは?
年齢、性別、国籍、障害の有無などに関係なく、全ての人に使いやすくデザインされているのがユニバーサルデザインです。普段何気なく開閉しているドアでも、使う人によってさまざまな困難を抱えることも少なくありません。
例えば、一方方向にしか開かないドア。ドアを引かなければいけない方向から車椅子で開けようとした場合、かなりの手間と危険が伴います。両手に荷物を持った時、雨で傘をさしている時なども不便に感じる人が多いのではないでしょうか?
漢字だけで「引」、「押」と表示されているドアも、外国人には伝わりにくいでしょう。入口のドアで不便、不快な思いをする建物に人は集まりません。ドアの開閉は日常であり、様々な人のささいな日常に寄り添えることが重要です。
誰が使っても不自由しない造りであることが、ユニバーサルデザインをドアに取り入れる最大のメリットと言えるでしょう。
ユニバーサルデザインのドア例10選
人感センサーで開閉される自動ドアは、両手が使えなくても子どもからお年寄り、障害のあるなし、国籍に関わらず快適に使える、ユニバーサルデザインです。車椅子、ベビーカー、子どもなど全ての人に使いやすい設計になっています。
手で触れるタイプの自動ドアもありますが、その場合は触る部分の高さなどがポイントになるでしょう。小さい子どもでも手が届くのか、両手が使えない時に楽に開くのか、手で触れることを外国籍の人に理解してもらえるのか、などでユニバーサルデザインかどうか判断が分かれるでしょう。
・ユニバーサルデザインのドア②「低い位置のドアハンドルで軽い引き戸」
出典:ケアシスト
軽くドアノブを引くだけで楽に開閉ができる引き戸は、ドアハンドルの位置も重要です。低い位置にドアハンドルを取り付けることで、車椅子に乗っている人も小さい子どもも快適に使える工夫がされています。
また、このデザインは引き戸にありがちな戸袋がないため、手すりの設置場所に制限がありません。室内にも手すりをつける必要が出た場合、設置場所に困らないのは大きなメリットですね。
・ユニバーサルデザインのドア③「車椅子も介助者も楽に通れる幅広のドア」
出典:京王プラザホテル
ドアが簡単に開閉できても、車椅子が楽に入れる幅がないと不便ですよね。さらには、車椅子に限らず利用者が歩行に介助が必要な場合であれば、楽に大人二人が行き来できるスペースが必要です。
幅広のドアは、医療現場、介護現場でも多いに役立つドアと言えるでしょう。
・ユニバーサルデザインのドア④「電車や新幹線のホームドア」
視覚障害者や子どもの落下事故を防ぐために設置された、電車や新幹線のホームドアもユニバーサルデザインです。交通手段である電車や新幹線に乗る度に、落下の不安を感じていては快適な日常とは言えません。構造上設置が難しい場合も何らかの工夫が急がれます。
・ユニバーサルデザインのドア⑤「内側からも外側からも押すだけの折り戸」
出典:株式会社イプロス
室内で引き戸にするスペースが確保できない場合に採用されるのが、内側外側両方から押すだけで開閉できる折り戸です。折り戸を採用することで、両手が塞がっているときの開閉や、サインで押し引きを示さなくても良いでしょう。
また、折り戸は指を挟む危険があるため、指はさみ防止機能が採用されていると、より安全ですね。
・ユニバーサルデザインのドア⑥「玄関にも楽に開閉できる引き戸」
出典:LIXIL
ドアノブが低い位置に大きく作られているため、子どもでも片手で楽に開閉ができる玄関ドアもあります。赤ちゃんを抱っこしたお母さんや、楽な力で開けたい高齢者など、片手で開閉できる引き戸は便利です。軽い引き戸は、高齢者の外出時の億劫さを解消してくれるでしょう。
・ユニバーサルデザインのドア⑦「ドアレバーの飛び出しを抑えて怪我防止」
出典:積水ハウス株式会社
開閉のしやすさだけでなく、ドアノブにぶつかる怪我防止の観点からデザインされたドアもあります。多くのドアノブは、車椅子に乗っている人や子どもがぶつかりやすい高さにあります。
その結果、ドアノブに勢いよくぶつかり怪我に繋がる恐れもあるでしょう。廊下側のドアの設置位置を内側にずらし、ドアノブの飛び出しを極力減らすことで、怪我を防ぐことができますよ。
・ユニバーサルデザインのドア⑧「乗った方向を向いて降りられるエレベータードア」
ユニバーサルデザインが採用されていないエレベーターでは、多くの場合に車椅子やベビーカーで乗るのに不便を感じてしまいます。狭いエレベーター内では、降りるために車椅子やベビーカーの方向転換をするのは難しく、さらに他の人が乗っていると益々不便です。
その不便を解消してくれるユニバーサルデザインのエレベーターとして、向きを変えず一方方向に乗り降りするものが増えています。重いキャリーケースを持った旅行客にとっても、便利なドア設計と言えるでしょう。
・ユニバーサルデザインのドア⑨「サッシの段差がない広いドア」
出典:comany
多目的トイレは、その名の通り多目的に使われるトイレ。車椅子の人、赤ちゃんや小さな子ども連れの人、人工肛門の人など様々な人が使うため、そのドアはより万人が使いやすいものでなくてはいけません。
サッシによる段差のない釣りタイプの引き戸、広い入口、楽に開閉できるドアノブなど、多目的トイレのドアはユニバーサルデザインの全ての要素が詰まったドアと言えるでしょう。
・ユニバーサルデザインのドア⑩「キーをかざすだけのオートロック自動ドア」
マンションに入るとき、鍵を出してオートロックを解除するのは案外手間がかかります。小さな子どもやお年寄り、買い物で両手が塞がっているときは、なおさら不便に感じるでしょう。
そこで、家に入る度に不便な思いを感じなくて済むように、自宅の鍵をかざすだけでオートロックを解除して自動ドアが開閉するシステムを採用した、ユニバーサルデザインのドアがあります。
改修工事などで取り入れるマンションもあるようですね。マンションや住宅は日々進歩していて、数年前では考えられなかったような便利なシステムが当たり前のように採用される時代になりました。多様性を受け入れ、皆の住み心地を考えることで、マンションに適用されるユニバーサルデザインも進化していくでしょう。
ユニバーサルデザインのドアが採用されている例
私たちの身近な場所にユニバーサルデザインのドアは採用されています。
・公衆トイレ
何気なく見ているドアのトイレマークや大きな扉など、誰でもトイレとわかり、多国籍の言語で表示されています。
・駅のホームドア
駅のホームドアは落下の危険防止の他にも、ここに停車する路線の表示や車両番号などわかりやすい工夫がされています。
・幼稚園や保育園
出典:DAIKEN
小さな子どもが出合い頭の衝突で怪我をしないようにドアの向こうに人がいるかどうかを、確認できるように設計されています。
ユニバーサルデザインのドアで皆の日常を快適に
ユニバーサルデザインのドアについてご紹介しました。
もし自分が言葉のわからない外国に行ったら…もし自分が車椅子に乗ることになったら…もし自分が小さな子どもだったら…と、色んな状況を自分のこととして考えてみると、何気なく使っているドアの問題点がいくつも浮かんできます。
色んな人が当たり前のように快適に過ごせるよう、ユニバーサルデザインのドアがより多くの場所で取り入れられるのを願います。